女の子たちの変化がうれしい
女の子たちと関わっていくことは何も苦ではありません。もちろん疲れることはあるし、暴力を振るわれそうになったり、ひどく傷つけられたりということもありますが、それ以上に彼女たちとの信頼関係に私も支えられていると感じています。
「家族のように思っている」「出会えてよかった」と言ってくれたり、手紙をくれたり、大事な話があるときにちゃんと話そうと思ってくれたり、うれしいことや辛いことを報告しようとしてくれたり。女の子たち自身が、誰かにまたそういう気持ちを返していきたいと思ってくれることがすごくうれしいです。
虐待で強く支配されてきて、事務所にやってきても「靴脱いでこっちにおいで」と言われるまで玄関に立ったまま動かなかった子が、ソファに寝転ぶようになり、甘えたことを言い始めたりすると、ちょっとよかったなって。そういう一つ一つの変化が喜びであり、かわいいなって思います。
私のような若い女性がこういう風に声をあげることに対しての中傷はけっこうあります。性被害や性虐待といった問題と切り離せないところで活動しているので、加害者など、今まで好き勝手やってきたことができなくなったら困ると考える人たちが、こういう問題をないことにしたがっているんじゃないでしょうか。
ネット上にそういう人たちがいる一方で、実感としては理解してくれる人が増えているとも感じています。理解ある、守ってくれる大人の味方を増やしてやっていけたらいいなと思っています。
30代になっても女の子たちと対等でいたい
息抜きは週に1回の整体です。そういうところでも「虐待された子どもの保護をしている」と仕事の話をすると、けっこう関心を持ってくれることが多くて。整体師をめざそうとしている女の子にアドバイスをくれたこともありましたし、通っている美容室でも「美容室に行ったことがない女の子がいるなんて。何かできることがあれば」と、定休日に高校生たちの髪をカットしてくれました。
この先私が30代になって、どんな風に女の子たちとの関係が変わっていくんだろうということはよく考えます。彼女たちからはどうしても「大人」という風に見えるでしょうが、これからも上から目線ではなく、寄り添って一緒に活動していく、対等な関係性を築けるように意識していきたいです。
文/谷口絵美 写真/品田裕美
一般社団法人Colabo代表。1989年生まれ。中学生の頃からほとんど家に帰らず、渋谷で多くの時間を過ごす。高校中退後、明治学院大学に進学。現在は「居場所のない高校生」や「搾取の対象になりやすい青少年」の問題を社会に発信しつつ、当事者の支援を行っている。著書に『難民高校生-絶望社会を生き抜く「私たち」のリアル』(英治出版)など。
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