素直な子どもと、建前のある大人

 2010年に「ほいくる」を立ち上げてからは、軌道に乗せるため奮闘する毎日でした。それまでの私は保育園で子どもと接し、大人と接するのは保育士と保護者がほとんど。いわば初めて「大人の世界」に足を踏み入れたようなものです。名刺交換やプレゼン、ビジネスメールを書くのも初めてでしたが、何より戸惑ったのは「素直な子ども」と「建前のある大人」の違いです。

 子どもたちは本当に素直で、直球勝負。私がパーマをかけていくと「わあ、すごい寝グセ!」と言われたことも。そして翌日も「先生、今日も寝グセすごいね」って。「先生、大好き!」と言ってくれた子に「どこが好き?」と聞くと、「名前かな」とか、「匂い!」なんて言われたこともあります。それにくらべて、大人は名刺交換からはじまり、建前や謙遜をまじえた会話が普通ですよね。緊張感が全く違い、慣れるまでに時間がかかりました。

 起業も夫婦二人でしたので、お互いにできることは何でもやりました。夫がWebサイトという基本的な環境をつくってくれて、私はサイトに載せる文章やイラストを書きました。「ほいくる」に載せている遊びのアイデアも500個ほどは自分で考えたものです。今になって思えば、起業の大変さを知らなかったから飛び込めたのかもしれません。

「イラストは起業当時に比べると、少しはうまく描けるようになったかな。プレゼンのときなどは父からもらったモンブランのペンをお守り代わりにポケットに忍ばせています」(雨宮さん)

「大人目線」にならないために

 そんななか、「ほいくる」はとある事業プランコンペに応募し、出資を得ることになりました。事業を進めていくなかで、生後7カ月の息子を連れて、「インフィニティ・ベンチャーズ・サミット 2015 Spring Miyazaki」でプレゼンを行ったこともあります。

 あのときは夫や実母に協力してもらい、夜中に何度も練習してから登壇しました。7分間のスピーチでしたが、サービスの説明に加えて、「早期教育」や「知育」といった言葉ではなく、ほいくるが考える「遊びの重要性」について、どうやったら伝わるかを考えていましたね。

夫婦で協力し、家事や育児を分担してプレゼンを乗り越えました

 私は現在保育の現場からは離れているため、「じかに子どもたちの姿に関わりたい」との思いから、オフィスを月に1~2回開放して、ワークショップを行っています。ティッシュの空き箱やコップを使ってカメラをつくったり、牛乳パックで帽子をつくったり…。お家ではダメと言われていることも、ここではOK。「ハサミを使っていいよ」「思いきりお絵描きしていいよ」と言うと、みんな大喜びで遊びはじめます。「ほいくる」の遊びのタネや記事も、大人目線でつくってしまっては意味がない。子どもたちの世界観やリアルな姿に触れる機会をなくさないようにしたいと思っているんです。