妊娠中で仕事がつらいときは

 受診する際はもちろん、健康であっても職務内容や体調によっては、今まで通りに仕事をすることが難しいこともあるでしょう。そんな時は、職場に相談するとともに、医師に相談しましょう。医師の指導を受けた場合、会社は、次の措置を取る義務があります。

・妊娠中の通勤緩和措置……時差通勤や勤務時間の短縮等
・妊娠中の休憩に関する措置……休憩時間の延長や休憩回数の増加等
・妊娠中または出産後の症状等に対応する措置……作業の制限、休業等

 また、医師の指導がなくても、妊娠中の女性が請求した場合は、会社は軽易な業務に変更しなければならず、時間外労働や休日労働、深夜業務は課すことができないようになっており、働く妊婦を守るための法整備があるのです。

安心して働き続けるために知っておいたほうがいい妊娠中の制度  (C) PIXTA
安心して働き続けるために知っておいたほうがいい妊娠中の制度  (C) PIXTA

つわりや切迫早産で出社できないときに使える制度は

 そして、妊娠が分かってからつわりがひどくて出社できない状態が続いた場合や、予定日よりも早く生まれそうになる切迫早産、流産の恐れがある状態の切迫流産などで安静が必要で出社できないような場合は、健康保険の傷病手当金制度が使えます。

 傷病手当金とは、勤務先の健康保険に加入している女性が対象の制度です(国民健康保険や退職して夫の扶養に入った女性にはありません)。

 連続3日以上休んだときは、4日目以降につき、給料1日あたりの3分の2を受け取ることができます(正確には、支給開始前12カ月間の各標準報酬月額の平均額を30で割った額の3分の2)。

 つまり、給料が30万円だったとすると、ざっくり20万円を傷病手当金として受け取ることができるので、妊娠にまつわる症状で休んでいる間も収入はゼロにはならないのです。

 また、会社員の中でも、健康保険証に「○○健康保険組合」と書いている場合は、独自の上乗せ「付加給付」があることもあります。職場の健康保険組合の給付を調べておくと、より安心ですね。

 妊娠は病気ではないというものの、一人の人間をこの世に迎える時には何が起こるか分かりません。約10カ月の妊娠期間中、せめてお金の不安なく過ごせるように願います。

【参考】
大阪市のサイト
世田谷区のサイト

文/前野彩 写真/PIXTA