控除を組み合わせて使うとどうなる?

 では、市販薬代がたくさんかかったので医療費控除の特例を使い、保険に入ったので介護医療保険料控除を使い、老後準備としてiDeCo(個人型確定拠出年金)の小規模企業共済等掛金控除を使うとどうなるのでしょうか?

 実はこれらの控除は同時に使うことができます。

この機会に、税金が決まる控除のしくみを一度考えてみませんか (C) PIXTA
この機会に、税金が決まる控除のしくみを一度考えてみませんか (C) PIXTA
会社員の基本の3控除をだけを使った場合の納税額
会社員の基本の3控除をだけを使った場合の納税額
控除を使わない場合の納税額

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複数の控除を使った場合の納税額
複数の控除を使った場合の納税額
控除を使った場合の納税額 350万円、450万円、550万円の年収別にまとめてみた

 上の表を見て分かるように、控除を使ったほうが、所得税と住民税を合わせて、
年収350万円の人は合計で4万4300円の税金
年収450万円の人は合計で5万200円の税金
年収550万円の人は合計で6万2000円の税金
安くなります。

 薬代や医療保険料の支出が少しカバーできますし、iDeCoは老後の積立をしながら税金まで安くなるので、メリット大ですね。

 なお、この状態で、さらにふるさと納税を行ったとすると、自己負担が2000円となる寄附の目安額は、
年収350万円の人は約2万8000円
年収450万円の人は約4万3000円
年収550万円の人は約6万2000円
なります。

 会社員の基本の3控除だけを使い、複数の控除を使う前は、

年収350万円の人は約3万6000円
年収450万円の人は約5万3000円
年収550万円の人は約7万円
だったので、「控除」が増えることで納める税金が少なくなった分、ふるさと納税の目安額も下がったことがよく分かりますね。

 私たちは、学校で税金の決まり方を教わっていません。そのため、「税金が安くなる」とiDeCo(個人型確定拠出年金)を始めながら、一方では「年収だけを基準にした納税額をもとにして、有利な寄附金額の上限までふるさと納税をする」という矛盾する行動をしている方も時々いらっしゃいます(ここではふるさと納税の是非ではなく、税制面での収支にだけ着目してください)。

 この機会に、自分のために正しい知識を持ってくださいね。

【税金が決まる仕組み&年収別・控除で安くなる税金】
1■会社員なら誰もが使える控除3つ 税金はどう決まる?
2■350万~550万円年収別 控除で安くなる税金額1【市販薬購入費用&医療保険料】
3■350万~550万円年収別 控除で安くなる税金額2【iDeCo(個人型確定拠出年金)、ふるさと納税、住宅ローン】
4■350万~550万円年収別 控除で安くなる税金額3【控除を複数使った場合】(今回はここ)
5■住宅ローン控除+iDeCo加入で税金が安くなる理由

文/前野 彩 監修/税理士・備順子 写真/PIXTA