退職金制度が企業型確定拠出年金のときは?

 勤務先が退職金制度として企業型確定拠出年金を取り入れている企業も増えています。企業型確定拠出年金は、「DC」や「401k」とも呼ばれ、企業によっては選択制として導入され、「ライフプラン年金」や「ライフプラン給」などと呼ばれることもあります。

 確定拠出年金では、原則60歳まで積み立てたお金を引き出すことができないため、退職後の働き方によって、手続きが異なります。

個人の運用次第で将来の給付額が変わる「確定拠出年金」を導入する企業が急増中。あなたの勤務先は導入していますか? (C)PIXTA
個人の運用次第で将来の給付額が変わる「確定拠出年金」を導入する企業が急増中。あなたの勤務先は導入していますか? (C)PIXTA

(1)転職先の会社に企業型確定拠出年金がある場合

 転職先がすぐに見つかり、その会社にも企業型確定拠出年金制度がある場合は、転職先の企業型確定拠出年金に加入します。現在の会社で積み立てたお金を転職先に持ち運んで積立・運用を行うため、手続きは転職先の企業の指示に従って行いましょう。

(2)上記(1)以外の場合

 転職先に企業型確定拠出年金がない、あるいは、失業中、個人事業主として働く、専業主婦になるなど、すぐに企業型確定拠出年金に加入しないという場合は、「個人型」確定拠出年金制度(iDeCo)に制度を変更する(移管)手続きが必要になります。証券会社や銀行などの金融機関から、iDeCoで運用するお金を管理するための窓口を選んで手続きを行いましょう。

 iDeCo口座を開く際は、さらに2パターンに分かれます。

 まずは、「加入者」になるパターン。加入者になる場合は、自分の口座から掛け金を積み立てて、老後資金の準備を行っていきます。この場合、所得税や住民税を納めている人は、支払った掛け金を所得から差し引くことができるため、節税になります。

 もう一つは、「運用指図者」になるパターンです。運用指図者は、iDeCoにお金を移しても、新たな積み立ては行わず、過去にためたお金の運用だけを行います。この場合は、掛け金に対する節税効果がないままに、毎月口座から口座管理手数料が差し引かれるため、今まで貯めた残高からお金が減っていきます。そのため、個人型確定拠出年金の最低掛金(5000円~)の積み立ては続けられないかどうか、自分の家計をこの機会に整理してみましょう。

 なお、何の手続きもしないままに、退職後6カ月たつと、国民年金基金連合会に企業型確定拠出年金のお金が自動的に移され、その間は運用がなされず、加入期間にも参入されません。さらに、移管の手数料も追加されます。そのため、退職後に企業型確定拠出年金に制度変更しない場合は、6カ月以内に、個人型の確定拠出年金に資産を移す手続きを行いましょう。

 次回は、年金と健康保険に関わる手続きについてです。手続きを正しく行わないと、老後の年金が減ったり、医療費の支払いが全額負担になったりすることもあります。退職を考えている方は、次回もぜひ、チェックしておいてくださいね。

文/前野彩 写真/PIXTA