2. 「災害減免法」が使えない場合にも適用できる「雑損控除」

 被災しても、時価の2分の1以上の損害にはならなかった場合は、「災害減免法による所得税の軽減免除」の適用は受けられません。そこで、次の二つのうち、いずれか多いほうの額を「雑損控除」として確定申告できるのです。

(1)差引損害額(注)-その年の所得の10%

(2)家や家財の取り壊しや除去にかかった費用など-5万円

(注)差引損害額とは「損害金額+家や家財の取り壊しや除去にかかった費用など-保険金」です。


 損害額は本来、家や家財をいくらで買ったのか、被害に遭った時までの価値の減少額(減価償却費)はいくらなのか、などをもとに計算しますが、これらの損害額を一つひとつ計算することは困難です。そこで、被災者の利便性を図って、国税庁は「独身者の家財の評価額は300万円」というように、家や家財などの損失額を計算する際の評価額を公表しています。その評価額に被害の割合を掛けたものを損失額とすることができるので、申告をする上での煩わしさが減少しますね。

 それでは、年収400万円のAさんの場合で見てみましょう。

 年収400万円のAさんの所得は266万円です。ここでは実際の損害額が100万円で、家財などの除去費用が10万円かかった場合で試算してみましょう。

 (1)の計算式「差引損害額-その年の所得の10%」では、「100万円+10万円-26万6000円(所得266万円の10%)」=83万4000円となります。

 (2)の計算式「家や家財の取壊しや除去にかかった費用など-5万円」では、「除去費用10万円-5万円」=5万円となります。

 この結果、金額の多い(1)の83万4000円が、「雑損控除」として申告できる金額になります。

 「では、83万4000円分の税金を引いてくれるの?」と思いがちですが、注意が必要です。一つ目の「災害減免法による所得税の軽減免除」は直接税金の減額・免除の制度でしたが、二つ目の「雑損控除」は、所得控除といって、税率をかけて税金を計算する前の段階から差し引くことになります。最終的な税金への影響は、年収400万円のAさんの場合、83万4000円×所得税率5%分と、住民税83万4000円×10%分の軽減となり、本来納める税金、所得税と住民税合わせて、約12万5100円が軽減されます。