【保険料が決まる基(2)運用】

 先ほど、「500万円の死亡保険金を受け取るための保険料が年間5万円」という例を出しましたが、このとき、保険会社はこの保険料の一部を運用します。

 仮に、運用利益が10%得られると考えるのなら、保険会社が集める一人当たりのお金は、4万5455円で済みます。(4万5455円の10%の利息は、4545円のため、 元本の4万5455円と利息の4545円を合計すると必要な保険料の5万円になります)でも、運用利率が1%としたら、4万9505円を集めなければなりません。この「○%で運用します」という利率を「予定利率」といい、予定利率は高いほうが、私たちが支払う保険料は安くなります。1980年代から1990年前半では、予定利率が5%を超えた時代もありましたが、現在は1%前後と下がっています。

 なお、注意していただきたいことが一つあります。

 ここでは、保険料の運用利益と保険料の関係を理解していただくために、集めた保険料全額を運用する例でお伝えしました。ただし、現実の保険料においては、私たちが支払った保険料全額が予定利率で運用されていません。保険には、保険を維持するための経費も必要になるため、保険会社に支払った保険料から経費を差し引き、その残ったお金を予定利率で運用しているのです。

 時々、「保険のほうが預貯金よりも金利が高いから」という言葉を聞きますが、預貯金の金利は、私たちが預けたお金全額に対して利息が付きますが、保険の予定利率で運用されているのは、支払った保険料の一部です。預貯金の金利と保険の予定利率を同じように考えないでくださいね。

【保険料が決まる基(3)経費】

 さて、私たちが保険会社の保険を知るのは、コマーシャルやパンフレット、そして、保険会社の担当者がきっかけになることでしょう。保険商品を販売するためには、社員の給料やオフィスなどが必要になるため、これらの経費も保険料に加えます。

生命保険料の中に保険会社の運用にかかる「経費」も含まれているって、知っていましたか? (C)PIXTA
生命保険料の中に保険会社の運用にかかる「経費」も含まれているって、知っていましたか? (C)PIXTA

 経費が公表されている保険会社は少ないのが現状。ですが、経費公表の先駆けとなった保険会社の経費率は、約23%。これが保険の経費です。先ほどの例で、予定利率が1%のときの保険料は4万9505円でしたが、これに経費を含めた最終的な保険料は、6万4292円になるのです。

 「年齢が上がったら保険料が高くなる」「保険会社によって保険料が違う」といわれるその理由は、お分かりいただけたでしょうか。

 なお、保険は「必要な人が入るもの」です。保険料が年齢や会社によって違う理由を知るとともに、保険に加入する前は、必要性をしっかりと確認するようにしてくださいね。

文/前野彩 写真/PIXTA