一番難しいのは「どれくらいやるか」という判断

 そうした経験を積み重ねているうちに、少しづつ、懐具合も改善されて、次のビジネスの種まきとして社会人大学院に通うなど、微調整をしながら新しいビジネスの機会にも触れられるようになっていきました。そう、起業したての私には「微分」の概念が欠けていたのです

 仕事でもプライベートでも一番難しいのは、「何をやるべきか」というゼロイチな判断でなく、「どれぐらいやるべきか」という判断です

 飲み会で人脈作りか、社会人大学院で勉強すべきかを考えるのは簡単ですが、飲み会は月何時間まで付き合うべきか、その場合、勉強には月20時間それとも30時間かけるべきかと考えると、判断が難しいのです。

 第1回の記事「感情で判断して後悔した女子に経済学が効く理由」でトレードオフ(時間は有限だから、何かを行えば、何かを失うこと)について触れましたが、ゼロイチで判断できることなら楽。でも、世の中のほとんどは上記のような微妙なトレードオフの場面ばかりです。

 では、どれぐらいやればベストな判断になるのでしょう。

人生で失敗が怖いときに役立つ「微分」

 「微分」とは「微細に分ける」という意味です。

 経済学では、国がどんな施策を打てば多くの人が幸せになるのか、どんなタイミングで施策を行えば最善の判断になるのか……を、いろんな場面を想定して検証します。でも、その前提条件があまりにおおざっぱだと、最適な判断を見つけられないかもしれません。

(C)PIXTA
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 そのために、前提条件を細かくして、微調整を繰り返して分析していくんです。そうすれば、芳しくない分析結果が出てきたとしても、すぐ前に立ち戻ってリカバリーできるというものです。

 もっとも、私たちの人生はそんなに細かく考えてられませんが、何事も微調整をしながら行動を起こせば、失敗してもすぐに調整が可能なのです。

 当時の私も、いきなり「えーい!」と会社を辞めて新天地に向かうのではなく、まず今の自分がすぐにできることをやってみて、リスクは小さく、すぐ微調整できる環境を作りながら行動を起こせばよかったのだと反省しています。

 まあ、万事休す。今、気づいてよかった! と思っています。皆さんには、「微分」をしながら、小さく失敗することをおススメします。

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