“離婚しやすく”なって、離婚率はどう変化した?
離婚制度の変化については、長期間のデータをとらないと正確な変化がつかめません。以下の論文では、法制度が変化してから10 年以上のデータを用いて実証分析を行っています。
“Did Unilateral Divorce Laws Raise Divorce Rates? A Reconciliation and New Results” JUSTIN WOLFERS(2006)
Wolfer博士の検証の結果、法制度が変化してから、離婚率は低下していました。博士は制度が変更したことで、一時的に離婚率は上昇することを示していますが、その後、緩やかな離婚率低下を示しました。
そしてさらに驚くことに、法制度から15 年ほど経過すると、Wolfer博士が実証した当時の離婚率の水準よりもさらなる低下を見せていたのです。
つまり、法制度の変更で“離婚しやすくなった”ほうが、長期で見ると離婚率を低下させた可能性があるということです。
“離婚しやすく”なったら、離婚しなくなる!?
なんだか不思議ですよね…。この理由について、以下の研究論文では、このように解釈しています。
“Why Divorce Laws Matter: Incentives for Noncontractible Marital Investments under Unilateral and Consent Divorce” Wickelgren, Abrahm L(2007)
「離婚しやすくなったことで、お互いのパートナーは、いざというときを意識して、離婚する際の分配を少しでも多くしたいと考える。そして、パートナー同士、婚姻関係で自分の貢献を高めるように工夫する。その結果、婚姻関係の継続につながっていくのではないか」と…。
つまり、「不安定な関係だからこそ、いざというときに備えて、いい婚姻関係に貢献しなくては!」と思っているうちに、それがかえってパートナー同士の努力につながって離婚するカップルが少なくなったということなんですね。
先を見越して(もしもの離婚で不利にならないために)お互いに努力し合うことを「本当の好き」といえるかどうかわかりませんが(笑)、愛を継続するためには、あえて不安定な関係を意識することも、効果的なのかもしれませんね。
文/崔真淑 写真/PIXTA
記事一覧ページはこちら ⇒ 【崔真淑の「女子とキャリアの経済学」】