35文字以内の文を重ねると相手は順序よく理解できる

 では、もっと具体的に、伝わる話し方テクニックを紹介していきましょう。

 例えば、話を聞いていて苦痛に感じるときってないですか。そういうときはきっと、「話す人が何を話そうとしているのか分からない」「話が長い」ときだと思います。

 話し上手な人は、「今日これから話すのは、セクハラ問題についてです」「3つの問題点があると思います」などと、見取り図を先に提示します。受け止める側は、「これからそういう話が始まるのか」「3つ聞けばいいんだ」と落ち着いて聞くことができます。

 テレビのバラエティー番組や情報番組も、だいたい同じ構成です。お題がまず提示されて、出演者がそれに沿って、話したり意見を述べたりする。安心して見ていられますよね。しかも、最後まで見たくなる。

 「話が長い」と感じるのは、話全体の長さではなく、一文の長さが影響しています。極端な例ですが、小学生の下手な作文にありがちな、以下のような話し方です。

 「この間、ものすごくびっくりしたことがあって、何がびっくりしたかというのは、電車に乗って席に座ったら、目の前に父、母、娘二人という4人家族が座っていたんだけど、娘のうちの一人がものすごい派手な格好をしたギャルで……」

 一文が長く、読点がない話し方です。

 あるテレビ局のアナウンサーが読むニュース原稿の一文は、50文字以内というルールがあると聞いたことがありますが、僕はさらに短く、一文は35文字以内にするように意識しています。先ほどの「小学生の下手な作文のような話し方」を35文字以内に変換すると、こうなります。

 「この間、ものすごくびっくりしたことがあったんです。何がびっくりしたかというとね、電車で目の前に座った家族がいたんです。家族構成は、父、母、娘二人。娘のうち一人がものすごく派手なギャルだったんですよ」

 そう、一つ一つ、文を切っていくんです。一文が短いことのよい点は二つ。一つ目は、切ることで、相手が順序よく理解できてイメージしやすいこと。2つ目は、切る(息継ぎの)たびに相手が話に口を挟めることです。

この人の話分かりやすいなぁと思う人は、たいてい、一文が短いです (C)PIXTA
この人の話分かりやすいなぁと思う人は、たいてい、一文が短いです (C)PIXTA

 情報番組にコメンテーターとして出演する専門家さんや評論家さんの多くは、一文が長い傾向があります。その領域のプロではあってもしゃべるプロではないから当然なんですが、中には上手な人もいますね。

 例えば、芸人を経て政治家になった東国原英夫さんは、「短く印象的に伝える」のがとてもお上手。情報トーク番組「バイキング」(フジテレビ)を見ていても、短いフレーズを重ねて話をしています。そうすると、MCの坂上忍さんが、自然に話に入っていくこともできるんですよね。

東国原さん「僕は、大嫌いですね」
坂上さん「あ、嫌いなんだ?」
東国原さん「そうですね。なぜかというと……」

 こんなふうにテンポがいい。

 自分は話し下手だと感じる人は、しゃべろうとする内容を文字に起こして、文字数をカウントしてみるといいですよ。長ければ、35文字以内に収まるよう一つ、一つ、読点を入れて区切ってみる。35文字以内をずっと意識していると、なんとなくしゃべっていても、その文章が35文字よりも長いか短いか自己認識できるようになっていきます。