介護のテーマにも関わらず重くなり過ぎない…三姉妹と認知症の父親の話

『長いお別れ』中島京子(文藝春秋)

そろそろ親の介護が気になる人にお薦めしたい、認知症の父と家族の10年間を描いた連作短編集。 元国語教師で中学校の校長もつとめた父親が、ひとりでは家に帰れなくなり、家族の名前も忘れてしまう……。でも、妻と3人の娘たちは常にユーモアを忘れず、ときに不満をぶつけ合いながら、状況をできるだけ前向きにとらえています。実は著者の父も認知症だったのだそう。誰にでも訪れる老いをどう受け入れるか。ヒントになる言葉がいっぱいです。



大正時代の浅草が舞台カッコいい悪女が出てくる

『くれなゐの紐』須賀しのぶ(光文社)

舞台は大正末期の浅草。主人公の仙太郎は、失踪した姉の行方を探すため、女装して「紅紐団」というギャングの一員となり、さまざまな事件に巻き込まれてしまいます。女性の人生の選択肢が今よりも限られていた時代。女同士で助け合い、悪党を出し抜く紅紐団はかっこいい! けれど、一見強い彼女たちも危うさを秘めていることが次第に明らかになっていきます。女として生まれて不自由だなと感じたことがある人は必読。性別という檻から心を解放してくれます。



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石井千湖
石井千湖さん
ブックガイド
大学卒業後、書店勤務やネット書店のコンテンツ編集担当を経てフリーライターに。現在は新聞や雑誌で、書評や著者インタビューを中心に活動している。All About「話題の本」ガイド

文/石井千湖