我慢は一晩で十分 「自分さえ我慢すれば」は厳禁

 「自分さえ我慢すれば……」という考え方で本当の気持ちを押し殺し続けると、ボディーブローのようにじわじわと心身がむしばまれていきます。その結果、人間関係ごときで大好きだった仕事まで嫌いになってしまうこともあるんです。これって一番もったいないことだと思うのです。なので、我慢するのは一晩で十分。

 私は仕事でモヤモヤすることがあったら、まず自分が言いたいことをバーっとメールの下書きに書いて、一晩寝かせるんです。

 そうして翌日読み返してみるとだいたい、言いたいことの本質とはズレた感情的な言葉がたくさん入っているので、それを添削して本当に伝えたいことを3行分くらいにきゅきゅっとまとめて相手に送るようにしています。

 とはいえ、自分が相手より年下だったり、新人のうちは言い出しにくいですよね。私自身、デビューしたての頃は「これを言ったら面倒なヤツと思われて仕事がなくなってしまうかも……」とおびえて、自分のポリシーを曲げてまで理不尽な相手との仕事をやり続けたことがありました。

 でも、今振り返れば我慢してまでその仕事をやる意味って全然なかったなと思います。もしあのとき自分の考えをぶつけた結果仕事を干されたとしても、そんな相手とは付き合わないほうがいいですし、自分が誠実に仕事をしていれば、理不尽さを指摘したからといって変な噂が広まって誰とも仕事ができなくなる、みたいなことってそうそうない。フリーランスは特に足元見られやすいですからね(笑)。ギャランティについても言いにくい空気がありますが、仕事なんですからきっちり交渉したほうがいい。

 逆に思いを正直に伝えることで相手の評価が変わったり、実はすごく信頼できる人だったと判明することもある。あと、単純にちょっとした手違いや思い違いでカリカリしてしまった自分に気が付くこともありました。

 好きな仕事をずっと好きでい続けるためにも「少しの我慢」なんて軽く考えず、自分の思いをきちんと伝えていくことが、「仕事を守る」ことにつながると思います。

聞き手・文/小泉なつみ 写真/小野さやか イラスト/犬山紙子

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