年収と貯金額は比例しないもの。また、貯め方・増やし方一つでも、将来的な貯蓄額は違ってきます。今回の悩める女性は、貯蓄一直線の派遣社員。月収の半分を貯め続け、まだまだ増やしたいという相談です。「このままでいいのでしょうか?」と尋ねる彼女は、いったいどんな目標に向かって進んでいるのでしょうか。そしてファイナンシャルプランナーの高山一恵さんのアドバイスはいかに!?

頑張り屋さんの彼女の、意外な貯金の動機とは イラスト/北村みなみ
頑張り屋さんの彼女の、意外な貯金の動機とは イラスト/北村みなみ
坂本舞さん(仮名) 29歳 派遣社員
年収350万円 一人暮らし
長所 実行力がある
短所 ハマるとやめられない

おじさまの厚意も糧にする、倹約のプロフェッショナル

 収入がそこまで多くなくても、びっくりするほどお金をたくさん貯める人がいます。そもそも、収入の多さは貯蓄額に比例しません。

今回は、「収入が少なくても人生を逆転するには?」がテーマです。

 今回の相談者は、ハングリー精神旺盛な女性。「今の私の家計の状況、いいんでしょうか? 悪いんでしょうか?」と、自分の貯蓄の方向性を確認するために、私のところに相談しに来ました。

 都内で派遣社員として働く坂本舞さん・29歳は、月収は手取り20万円程度。都内で一人暮らしだというのに、貯金は手取りの半分の月10万円というから驚きです。見た目も割とおしゃれで、その倹約ぶりが全く分からない舞さん。その秘密は、彼女の何事も「決めたらやる」という精神に隠されていました。

 もともと関西で就職していたのですが、彼女は建築に興味があり、コンクリートが好き。そこで上京して、憧れだったコンクリートに関わる仕事に就くために、大手ゼネコンでの派遣社員を選んだのだそう。なんでそこまで!? と思いますが、彼女は何から何まで決めたらとことんやる猪突(ちょとつ)猛進タイプ。暮らしぶりにもそれがよく表れていました。

 少ない生活費で家計を成り立たせるため、家賃はなんと月3万円。派遣先から片道1時間半の郊外にある、共同トイレ付きのアパートです。

 そして、食費や日用品費など生活にかかるお金は、金券ショップやポイント、クーポンを駆使して暮らしていました。

 例えば、ランチ。節約女子のランチの定番はお弁当ですが、彼女はさらに上を行きます。金券ショップでマクドナルドの株主優待券を大量購入し、それをこつこつと消費していきます。栄養の偏りが心配ではありますが、お弁当よりも安上がりだと思われます。

 さらに奥の手は、職場のおじさま方とのランチ(笑)。彼女がそんなに倹約家だとは周囲は誰も知りません。ランチの時間が近づくと、そっとおじさま方にこう言います。

 「今日、ランチいかがですか?」

 かわいい部下からのお昼のお誘いですし、舞さんの職場では外食をする人が多かったため、一緒に行こうということになります。もちろんこれは舞さんの作戦。派遣社員の舞さんにお金を出させるおじさまは皆無で、ランチの費用はおじさま持ちに。この方法で舞さんはお昼代を0円で済ませていた日もありました。

 節約は食事代だけではありません。

 被服費は月2000円。コーディネートが得意なので、服はすべてリサイクルショップで購入するのだとか。相談に来た日も、「高山さん、このシャツ、定価なら1万円以上するナラカミーチェのものですけど、リサイクルショップで買ったら100円なんですよ」とにっこり教えてくれました。ここまで徹底的な倹約家はなかなかいません。

 舞さんの場合、交通費を浮かせるために、定期券ではなく常に回数券を使っていました。1回数十円単位の節約も、長い目で見れば貯金に差がつきます。

 普段はカード入れを3つ持ち歩き、(1)マクドナルドなどの無料または割引食事券入れ、(2)交通回数券、(3)共通ポイントカード(もちろんあらゆるポイントをこまめに貯めていました)と使い分けていました。

 そして、月収の約半分である10万円を貯め、1年足らずで100万円を貯蓄。

 さて、そんな彼女が、いったいどうして「これでいいのか?」と悩んでいたのでしょうか?