生保レディーに言われるままに保険に入っていると…?

 杏奈さんは何もしなくてもお金が貯まっていくので、自分の預貯金を把握していませんでした。もちろん資産運用はゼロ。定期的に貯蓄したこともなく、使う分だけ普通預金から引き出していました。

 ただ、毎月一定額支払い続けているものがありました。保険です。杏奈さんが勤める会社には、某外資系生保の女性が会社に定期的に営業に来ていました。なんとなく「保険くらいは入っておかなくちゃ」と思い、親切な生保レディーに勧められるままに保険に加入していたのでした。

 さて、問題はその中身。

「杏奈さん、今どんな保険に入っているの?」
「えーっと……、どれもいいと言われたから、あまり考えずに入っちゃっててよく分からないんです」
「そうなんだ。じゃあ、全部で月いくらくらい払ってるの?」
「確か、30万円くらいですね」
「ええっ!」

 杏奈さんはいまいち自分がどんな保険にいくらずつ支払い、それがどんな保障をしてくれるものなのかを把握していないようでした。

 いくら稼いでいるからといって、独身女性が月30万円も保険に入っているというのはちょっと違和感があります。そこで、私と一緒に、杏奈さんの加入している保険を改めて整理してみることにしました。

 まずは、医療保険。60歳満期で、解約返戻金があるタイプの保険で、月2万円となかなか高額。一般的には独身の人の場合、死亡保険金はあまり高額なものにしなくてもよいものなのですが、よく見てみると、死亡保険金は3000万円とありました。医療保険はあってもよいですが、死亡保険はこんなにいるのかな? と思う金額です。

 次は個人年金保険。こちらは一生払い続ける円建て終身保険と外貨建ての個人年金保険に加入していました。それぞれ10万円ほど払っていました。どちらも貯蓄型の保険です。

 また、もう一つ老後のためにと介護保障が付く養老保険にも入っていました。こちらも貯蓄型です。米ドル建ての商品で予定利率が3%になっているというのも、杏奈さんが言われるままに加入した要因でした。こちらは月8万円。

 しめて、月30万円。これは、入り過ぎですね。

 確かに、貯蓄型で利率も高くて、保障も手厚いと聞くと、お金を出してもいいかなと思ってしまうかもしれないものです。ただ、杏奈さんは年収が高いため、貯蓄のためにあまりリスクを取る必要がありません。保険といえば「低リスク」と勘違いしやすいですが、元本割れもありますし、仕組みも複雑なので、中身が分かりにくい金融商品の一つなのです。それに、急な解約をしなくてはならなくなったときに、解約すると損してしまうことも。

 また、年末調整で「生命保険料控除」のハガキを会社に持っていくこと、ありますよね? 保険の場合、支払った金額の一部はお給料から控除されるので節税効果があるのですが、上限があるためその効果も限られます。杏奈さんの場合は、「え? 年末調整ってなんですか?」と言っていましたが……(生命保険料控除のハガキ、毎年捨てていたみたいです。もったいない)。

 これだけ稼いでいたら、お金のことは気にならなくなるものなのでしょうか……。いや、いざ自分が病気になったり退職しなくてはならなくなったりしたときに、「あの時もっと上手に運用していたら」と思う日が来るかもしれません。そのためにも、自分の資産の状態を確認してみることにしました。