親の助けを借りつつ、生きる力を身に付ける

 まず、大事なのは貯蓄をすることです。しかし、全くマネーリテラシーがなかった結衣さんは、「私には家計管理はできそうもありません……」と、家庭の財政を切り盛りする70歳のお母様に、貯蓄を手伝ってもらうことにしました。

 急には生活レベルは下げられないということで、結衣さんは月に5~7万円を自分の母親に渡すことに。お母様が結衣さんの代わりに貯蓄して、貯金を管理してもらうことにしました。

 また、お母様に相談したところ、多少財産があることが分かりました。その場合、生前に財産分与をきちんとしておくことが大切です。これを機に税理士に相談し、相続税対策として、ご両親から結衣さんにまとまった金額を譲渡してもらうことにしました。

 この迅速な対応を見ていると、いつか来る結衣さんの「一人暮らし」に対して、心配がより強かったのは、結衣さんよりも結衣さんのお母様だったのかな? と感じます。お母様のもとで、自立のためのマネーリテラシーを学んでいってもらうことが一番かもしれません。

 さて、貯蓄はいったんそれとして、残ったお金は結衣さんがこれから生きるために必要なことに投資してみたら? と私はアドバイスしました。PCスキルがなければ、事務仕事に就くことは難しいでしょうし、それ以上の資格やスキルを取るのはさらに時間がかかります。まずはパソコン教室に通ってみては、と勧めると、結衣さんは取りあえずそこから始めてみることを決意。少しずつスキルを磨く努力を始めてみたようです。

 結衣さんはその後、「貯蓄も結婚も、もっと早くするべきでした」と私に言いました。時間がたてば、状況が変わってしまうこともありますが、それに気付かずにいることも少なくありません。マネー相談を機に、自分のことを客観的に見ることができたようでした。

 「誰かに面倒を見てもらおう」という甘い期待には、どうぞ気を付けてくださいね!

今回の学び

今回の学び「王子様を待つより、生きる力をつけよう」
今回の学び「王子様を待つより、生きる力をつけよう」

聞き手・文/相馬留美 イラスト/北村みなみ