奨学金返済による自己破産者は、過去5年間で延べ1万5000人となっているほど、社会問題になっています。今回は、大学進学のために借りた奨学金の返済で、彼氏にフラれたトラウマを持つ女性が登場します。抱える借金と心の傷の深さに、FPの高山一恵さんはどうアドバイスをするのでしょうか?

宮崎あゆみさん(仮名) 33歳 一般職OL
年収350万円 一人暮らし
長所 堅実
短所 他人に甘えられない

月2万円の奨学金返済に母親への仕送り3万円で、結婚が破談に

 最近よくある相談の一つが、「奨学金の返済」です。つつましい生活をしている人でも、これがネックで貯蓄ができずに困っているということも多いもの。奨学金を借りた理由も家庭ごとに違うので、進学した本人だけで返済するには非常に厳しいケースもあるのです。

 今回、私のところに訪ねてきたあゆみさんは、真面目を絵に描いたような、礼儀正しくて、身なりのきっちりとした女性です。中小企業の一般職OLで、年収は350万円。彼女の愛読書は「日経WOMAN」で、仕事も誠実に取り組み、プライベートでは質素で堅実なお金の使い方をしており、貯金ができそうなタイプではありました。

 しかし、彼女はこう言いました。「チャンスがあれば結婚したいんです。でもお金の問題があってできなくて……どうしたらいいでしょうか」

 以前にも、リボ払いし過ぎて結婚できない女性(美にお金をかけ続けた「リボ払い」女性の悲劇)をご紹介しましたが、お金の問題で結婚できないというのはだいたい借金がらみです。

 ただ、あゆみさんの場合の借金とは、「奨学金」でした。

 彼女の月収は手取り20万円でしたが、そのうち奨学金の返済に2万円かかっていました。加えて母親への仕送りが3万円、都内のアパートに一人暮らしをしており、その家賃が7万円。唯一の趣味である料理のカルチャースクール代5000円で、残りの6万円で食費や光熱費、通信費などの生活費をすべてまかなっていました。

 それでも真面目なあゆみさんは、節約して貯蓄を毎月1万5000円程度していました。

 「生活に余裕はないし、年収も伸びない仕事でしたから、本当は20代のうちに結婚したかったんです」とあゆみさんは言います。

 実はあゆみさんは、20代の頃に結婚を考えた男性がいたそうです。婚約の直前まで進んだものの、あゆみさんが奨学金の返済中であることを知ると、「借金がある女性とは結婚できない。それに、自分の生活が苦しいのに、お母さんに仕送りもしているのはちょっと……」と去っていったのだとか。あゆみさんはそのトラウマから、「奨学金の返済などでお金がないから結婚できない」と悲観的になっていたのでした。

 とはいえ、今の生活を一生続けていくことにも不安があります。このままでは、キャリアアップのために投資するお金の余裕もありません。そんなさまざまな焦りを抱え、彼女はマネー相談に訪れたというわけでした。

 彼女に、奨学金を借りた理由を聞いてみました。

 あゆみさんの家庭は、あゆみさんが小さい頃は事業を行っており裕福でしたが、高校2年生の頃、事業に失敗して倒産。両親には貯蓄がなかったため、大学進学時に毎月8万円を4年間奨学金から貸与してもらい(総額約380万円)、足りない分は銀行の教育ローンで補ったそう。

 その後両親は離婚し、シングルマザーになった母親に、あゆみさんは仕送りの3万円を送金し続けていたというわけです。

 「お母さんは仕送りを何に使っているの?」と私が聞くと、「生活費だと思いますが、何に使っているかは聞いていません……」とあゆみさん。

 今あゆみさんの母親は、パート勤務で生計を立てているとのこと。確かに生活は大変かもしれませんが、あゆみさん自身も生活が苦しいことは、きっと伝えていないのでしょう……。

 あゆみさんが自分の人生を生きるためには、重過ぎる負担であると私には感じました。家庭の事情はさまざまですが、あゆみさんがこんなに苦労をしなくてもいいでしょう。

 マネー相談に来たこの日こそ、あゆみさんの人生が前向きになる分岐点になるはずです。彼女に今から必要なアドバイスを伝授していきましょう!