残業しない社員を評価したい

 コミュニケーションの活性化なら、エストファミリーだけでも十分機能したのかもしれませんが、クエスト制度を立ち上げたのにはもう一つ理由があるんです。このころは、帰属意識に加えて、社員の仕事に対する姿勢も二極化が始まっていました。簡単に言ってしまえば、あるだけの時間をかけて仕事をする社員と、仕事はさっさと時間内に終わらせて退社する社員です。

 入社当時20代前半だった社員も、20代後半、30代と年齢が上がるにつれて、家庭を持ったり、働き方を見直し始めたんですね。会社としては、効率良く仕事を終わらせる社員を評価したい。けれど、そうした社員は残業をせずに退社するので、プラスオンの報酬は与えられない。そこで「業務量評価を取り入れよう」となり、クエストの発想が出てきたわけです。

クエスト制度を立ち上げた森脇かほりさん
クエスト制度を立ち上げた森脇かほりさん

――クエスト制度は「社員の評価体制を整える」という流れから生まれたんですね。

 そうです。基本給のほかに「業務給」といって、新たに仕事を獲得した社員には報酬がプラスオンされる給与形態を取り入れました。これなら、仕事を早く終わらせている人ほど、クエストに挑戦する機会ができます。効率良く仕事を進めた社員が、さらなるチャンスをつかめる仕組みが出来上がりました。

――「クエスト制度」をスタートさせたとき、社内の雰囲気はどうでしたか? 浸透するまでは大変だったのでしょうか。

 最初から結構盛り上がったと思いますね。クエスト制度を始めるにあたり、社員には何度も説明を重ねてきたので理解を得ることができました。各ファミリーをミーティングスペースに呼んで制度の趣旨や目的を説明したり、里親になる社員には個別に話をしたりする時間をつくりました。また、事業部ごとにクエスト制度を理解してもらうためのセミナーも開催しましたね。

会社として数々の賞を受賞。一番手前は「グッドアクション 現場活性化部門賞」
会社として数々の賞を受賞。一番手前は「グッドアクション 現場活性化部門賞」

――すごい手間をかけているんですね。社員の方からは、「面倒くさい」「仕事量が増える」などのネガティブな意見は出ませんでしたか?