判断に迷ったら「今期限定のトライアル」で様子を見る

――「給料と悪口以外は何でもOK」ということですが、本当に何でも提案していいのでしょうか?

 もちろんです。本当に何でも来ますよ(笑)。例えば、「ミネラルウォーターのサーバーを置いてほしい」とか「ドアノブに静電気防止カバーを付けてほしい」といったささいな要望から、「コミュニケーションを活性化するために定期的に席替えをしませんか?」といったチーム力アップのための提案、製品開発案まで。SNSで見た他社事例をとりあげて「うちでも導入しませんか?」と教えてくれる人も多いですね。

ミーティングルームのドアノブには「改善提案」で採用された静電気防止カバーが付いていた
ミーティングルームのドアノブには「改善提案」で採用された静電気防止カバーが付いていた

 実は、導入する前は、総務部から反対意見もあったんです。「会社に対する不満が噴出するだけでは?」と。でも、どうしてもやってみたい!と押し切って始めました。ふたを開けてみると「会社を少しでもよくしたい」というポジティブな気持ちで寄せられるアイデアがほとんどでした。今は社内中、どこを歩いても、改善提案制度によって社員の声から実現したものばかりです。

――そうはいっても「単なるワガママ」をかなえることはできないと思います。採否の基準は何でしょうか?

 皆がより楽しくやる気を持って働く環境づくりにつながるかというのは大前提ですね。あとは、「すぐにできるかどうか」もポイントです。無農薬野菜支給は、私の故郷・北海道に農業をしている親戚がいたので、すぐにできると判断しました。あと、仕事に必要な用品や資格をとるための費用の支給も、すぐにできることですね。最近の例では「3カ月に1回くらい、社長とランチしたいです」という提案があったので、即OKしました。だって、私の予定さえ調整すればできることですから。

 迷ったら、「とりあえず今期限定のトライアルにする」と決めています。今期でいうと、美術館観覧料の支給を試していますが、それほど利用者がいなかったら打ち切るつもりです。スポーツジム代補助も当初は月2万円でしたが、利用の実態に合わせて月1万円に下げました。「とりあえずやってみて、ダメならやめる」とフレキシブルに運用しています。