薄毛の理由を知れば、笑いネタにはできないはず

 先日、ネットの記事を読んでいましたら、ある芸人さんが「昔の芸人は自分を落として笑いを取っていたが、今の若い芸人は他人をイジって笑いを取るから下品だ」という内容のことをおっしゃっていました。まさに貴女の今回の発言は、これに当てはまると思います。

 普段から、自分でハゲネタで笑いを取っていても、それは自分だから許されること。傷つかないためのさじ加減が分かっているわけです。「ここまでは自分で納得できるな」、と。

 それに、人の心理として自分を卑下したり、謙遜したときに、「そんなことないですよ~」という否定の言葉を待っているものではないでしょうか? 文面から察するに、きっとそのオジサンはそこまでは求めていなかったでしょうが、やはりズバリ薄毛を他人に指摘されるといい気はしません。きっとお酒のせいで、オジサンも笑いに昇華することができなかったのかもしれませんね。

 薄毛であることは、遺伝や生活環境など様々な要因が絡んできます。本人には、いかんともしがたい場合もあるわけでして。薄毛を肯定できている人でも、好き好んで積極的にハゲている人はほとんどいません。

 たしかに、現在ではAGA(Androgenetic Alopecia、男性型脱毛症)の治療方法が発達し、初期から始めれば薄毛はかなり改善できます。しかし、自由診療なので、投薬などをすれば経済的な負担もかかりますし、薬の飲み合わせの問題で内服できない人もいます。例えば、妊活中の男性は男性ホルモンに作用するフィナステリドは避けなくてはいけませんし、心臓や血圧に問題があればミノキシジルも要注意と医師に言われるはずです。

 もしオジサンにそんな状況があったとしたら、貴女が単に笑わせようとした何気ないひと言は、とてつもなく傷つける言葉になったはずです。「妊活のことを知らなかったから仕方がないよ」と仮に誰かがフォローしてくれたとしても、傷つけたことは同じです。そもそも自分の抱えている問題を職場の人全員に話すことではありませんしね。

 ぜひ、その男性には、謝罪をしてください。できれば、口頭よりメールなどでする方がいいと思います。というのも、面と向かって改まった形で言うと、相手がまたつらい気持ちを思い出すかもしれませんし、その状況を誰かが聞いていたら、当人はいたたまれない気持ちをさらに抱えてしまうかもしれません。

 「お酒の席でつい、ひどいことを言ってしまいました」これだけで十分です。つらつらと言い訳をするよりも潔い。

男性だって、中年だって、傷つくときは傷つく

 いろいろな経験をしてきた中年男性は傷つかないというのは、思い込みです。世間では、中年男性は厚顔無恥な存在みたいに言われることが往々にしてありますが、彼らだって当たり前ですが感情はあるし、悩みや心配事もあるんです。弱いところを表に出さないのが、男の美学のように思われていたのは昔の話。

 従来型の考え方だと、一般的に男性は強いものと思ってしまうかもしれませんが、それって古くさい。女性が一概に弱い生き物だと断定されたらつらいように、男性だって、中年だって、傷つくときは傷つくのですから。

文/藤村岳 写真/PIXTA

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