プライドを傷つけずに、身だしなみを指摘するには

 ただし、指摘をする際のタイミングは重要。顧客との面会の直前に、携帯用のエチケットブラシなどを渡して、「これで、襟元をきれいにしてきて」と事務的に伝えてください。もし、ブラシがなければ、「トイレの鏡でチェックしてきて」と促してあげてください。

 トイレに行く時間さえなければ、手鏡を貸してあげるだけでもいいかもしれません。ここでは年下の同僚となっていますが、たとえ年上の上司であっても、「○○さん、襟元に何かついていますよ」と指摘はする方がいいです。

 間違ってもしてはいけないのが、貴女が払ってあげること。これをすると、自分で気づくチャンスを奪ってしまいますし、人によっては無用なボディタッチに驚いてしまうかもしれません。無論、恋人でもない他人のフケなんて、触りたくないでしょうけれど。

 そして、商談が終わった後に、人の少ないところで先ほどの注意を説明してあげてください。「時間がなかったので、ぶっきらぼうになってしまいましたが」と前置きをしてあげると、当該の男性の気持ちもかたくなにならないでしょう。

 そのときに、「汚い」という表現は避けてください。確かに他人のフケなんてきれいではありませんが、それでもデリカシーのない言葉は傷つけてしまいます。男性は、恥ずかしいとそれをごまかすために、強気に出たり、わざと反発したりすることが多いもの。恥ずかしさの裏返しで、「フケくらいで!」と言ってしまうこともあるんです。

 そのような人には、「たったそれ(フケ)だけのことで、あなたの価値を落としてしまうことがもったいないので」と理由を添えてあげるとよいでしょう。「濃いスーツの色にフケはとても目立ちます。お茶に入ってしまうかもしれない……と、先方に思われたら、気もそぞろで商談どころではありませんよね」と言えば、男性だって分かってくれるはずです。

一方的ではなく、自分からも歩み寄る態度を

 これはフケだけでなく、鼻毛などでも同じことです。身だしなみは指摘しにくいことですが、いつも整っていない同僚とずっと一緒にいる貴女の評判も、同時に落としてしまうことになりかねません。

 というのも、「同僚の身だしなみも注意できない間柄の人たちに仕事をお願いできないな」と顧客相手に思われてしまうから。「意思疎通も図れない風通しの悪い関係なら、きっと仕事でも連絡ミスなどがあるのでは?」と裏読みされてしまいます。それとも、「そんなことにも気付かないなんて、がさつな仕事をされてしまいそう」と危機感を抱かれるかもしれませんね。たかがフケひとつで、もったいないと思いませんか?

 最後のアドバイス。「これから一緒に営業に行くときは、アポの5分前にトイレに行ってお互いに身だしなみをチェックする時間を設けましょう」と提案をしてみてはいかがですか。「私も自分のことを気にするようにするから」と、同僚男性に対する一方的な要求だけではないという態度なら、同僚のプライドを著しく傷つけることもないと思いますよ。

文/藤村岳 写真/PIXTA

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