看護師の言葉が気付かせてくれたもの

 夫が入院するまで、私は、経済的な視点でも、自分の将来を深く考えず、どこか他人事のように考えていました。でも看護師さんの言葉を聞いて、『そうだ、子どもたちにそれぞれの人生があるように、私の人生は誰のものでもない。自分で道をつくるしかないんだ』と気付かされました」

――そうして、現在働いていらっしゃる雑貨店でのお仕事に出合ったんですね。

 「はい、私の弟がたまたま雑貨店の経営者と知り合い、『人出不足で、誰かに手伝ってほしい』と言っていたと聞きまして。軽い気持ちで履歴書を送ってみたら、採用されることになりました。

 ただ、当初提示された時給があまりにも安く、『こんなに安いのなら、わざわざ働かなくても……』と正直思いましたが、次の仕事が見つかるまで、まずはこの雑貨店で頑張ってみようと。思い切って経営者に相談してみたところ、納得のいく時給を提示してもらえて、気持ちよく働き始めることができました」

――約10年ぶりのお仕事、いかがでしたか?

 「これまで会話の相手は、子どもや家族、ママ友くらいだったので、仕事としての会話ができるか心配でしたね。元気な声もしばらく出していなかったので……。不安はありましたが、いざ仕事を始めてみると、すぐに慣れて問題はありませんでした。仕事自体はすべてにおいて新鮮で、刺激的でした。仕事に行くと、新しい世界が目の前に広がっていくような気がしました」

――お仕事では、どんどんステップアップしているとお聞きしました。

 「最初は商品を並べたり、接客したりという仕事内容でしたが、最近はどんな商品を仕入れるかなど発注も任されるようになりました。また、共同経営者である店長が産休に入ることになり、私が店長代理を務めるようになって……。毎日同じ時間に出勤して同じような作業をしていますが、そのこと自体、『自分の新しい居場所』ができたようで心地よく感じています。

仕事のやりがいが増え、自分の居場所がもう一つできた 画像はイメージ (C)PIXTA
仕事のやりがいが増え、自分の居場所がもう一つできた 画像はイメージ (C)PIXTA

 常連で子連れのお客さんも多く、その子どもたちが私に懐いてくれたり、抱っこしてあげると泣きやんだりするんです。お客さんもお子さんもうれしそうな顔をしているのを見ると、大きな喜びを感じますね。『家族以外の誰かが喜んでくれる』という新しい感覚。それが、日々私の背中を押してくれているように思います」