共働きフリーエージェントが最強

――自分で稼ぐ力「人的資本」が大切だというのは分かりますが、会社を辞めて独立して仕事をするのは、資格があるとか、専門的な能力がないと難しい気がします。

 組織に属さずに働くには何らかのスペシャリストでなければなりませんが、必ずしも弁護士や公認会計士であったり、その分野の第一人者であったりする必要はありません。企業の経理や法務などの部署で働き、専門的な知識、経験を身に付けていれば、自分の得意分野を生かして、複数の会社から業務を請け負って働くことも可能でしょう。

 実はこうした働き方をする人は世界的に増加傾向にあります。アメリカでは、組織に雇われない働き方をする「フリーエージェント」が、数年以内に労働人口の半分を超えるといわれています。先進国では、会社に所属しない働き方はもはや一部の特別な人のものではありません。日本ではまだそれほど多くはありませんが、間違いなく今後は増えていくはずです。

 「人生100年時代」などといわれ、定年後の長すぎる老後が大きな問題になっています。これを解決する最も簡単な方法は、働き続けて「老後」を短くすることです。生涯現役なら、老後問題そのものがなくなりますから。日本の会社の「終身雇用」というのは、60歳あるいは65歳で社員を「強制解雇」する制度です。「会社を辞めて自立するのは不安だ」という声をよく聞きますが、生涯現役の時代では、誰もが定年後の長い「フリー」の期間を過ごすことになります。そう考えれば40代、50代でフリーになるのも同じことでしょう。

 フリーエージェントの収入がサラリーマン時代より不安定になるのは間違いありません。だからこそ、夫婦共働きで、どちらかの仕事がうまくいかなくなったときのリスクを減らすことが必要になるわけです。

共働きフリーエージェントという新しい働き方にトライする価値はある 画像はイメージ(C)PIXTA
共働きフリーエージェントという新しい働き方にトライする価値はある 画像はイメージ(C)PIXTA

働き方を決めることは自分の人生を決めること

――「会社を辞めても仕事はやめない」ということは分かりました。会社を辞めたとしても、稼げる力「人的資本」を高めていくためには、どうやってキャリアを積んでいけばいいのでしょうか?

 仕事内容にもよりますが、ほとんどの人にとっては、会社での仕事経験がフリーエージェントとして仕事をしていく上でのベースとなります。

 今、どんな仕事をしているのか、これまでどんな仕事をどんなふうに取り組んできたのかを棚卸して、それを汎用的な(どこでも使える世界標準の)専門性につなげていくことが大切です。

 終身雇用を前提としてきた日本企業では、広報から総務、その後は営業へ……といった具合に短期間でさまざまな部署に配属して「ゼネラリスト」を育てるような人事が行われてきました。定年までその企業に勤められるならそれでもいいでしょうが、転職市場では、こうした経験は「キャリア」としてまったく評価されません。どれも中途半端だからです。

 自分は広報の仕事が向いていると思えば、社内で営業など無関係な職場に異動するのではなく、別の会社の広報に転職してキャリアを継続すべきでしょう。これなら、子育て中でも契約社員やフリーとして広報の仕事を続けることもできます。子育てが一段落して本格的に働こうと思ったときに、一貫したキャリアをつくってきたと説明できるかどうかで、採用担当者の評価は全く違います。会社を辞めても稼げる力=「人的資本」を高めていくためには、自分のキャリアを自分でデザインし、仕事選びも戦略的にやっていく必要があるのです。