――時給も上がったということは、年収の変化はいかがでしょうか。

 「正社員の時と比べると、トータルの年収では、今は300万円ほどマイナスです。でも、時短勤務で残業がないため、ボーナスをのぞいて考えると、時間当たりの給料は少しマイナスになっただけでしょうか。もちろん以前のような収入があればよいですが、今はプライベートとのバランスがとてもいいので、収入よりもこのバランスを大事にしたいと考えています。

 実際に働き始める前までは、『派遣』というと、正社員に比べてキャリアパスとして弱いと感じていましたが、働いてみると、以前の業界と近いかたちで仕事をすることで、日々勉強になっています。また、フリーランスが多い職場なので、プロ意識や専門性の高さを肌で感じ、刺激を受けています。

 この派遣サービスでは、産休・育休制度もあるので、今後はそういう制度も生かしていけたらと思っています。もちろん、正社員に比べれば、社会的保障は少し足りないですが、今の私にはぴったりの働き方ですね」

――不妊治療はお金が非常にかかると聞くのですが、いかがですか。

 「はい、治療費の負担は非常に大きいですね。私は妊活を始めて1年半もたっていませんが、既に100万円はかかっています。今後、体外受精に進むため、金額的にあと何回挑戦できるだろう……という不安はあります。あまり長引くようであれば、どこかで見切りをつけないといけないかもしれないというプレッシャーは常にありますね」

――「妊活公言派です」とおっしゃっていました。

 「私は不妊治療に関して、周りにオープンにしています。妊活も不妊治療も、もっとフラットに言える世の中になったらいいなと思っています。全く恥ずかしいことではありませんから。ただ、まだ偏見や勘違いをされることもあるので、私のこの体験が、妊活の悩みを抱えている女性の助けに、少しでもなれたらいいなと思っています。

不妊治療に関して、もっと話しやすい社会になればいいなと思います 画像はイメージ (C)PIXTA
不妊治療に関して、もっと話しやすい社会になればいいなと思います 画像はイメージ (C)PIXTA

 これまで、不妊治療を経験した友人の話をたくさん聞きましたが、それぞれ体質も環境も違います。あくまでも参考にさせてもらい、家族で相談しながらどうしたらよいかを考えるようにしています」

――30代、40代は、プライベートのことと併せて、仕事の両立にも悩む時期ですよね。

 「私の周りでも、働き方に悩んでいる友人が多いですね。社会の変化は本当に激しく、最近は女性がバリバリ働くことを推奨される雰囲気がありますが、社会の変化に合わせて、女性の体が進化できるわけではないですから……。

 私が出会った新しい働き方がこれからもたくさん出てきて、自分に合う賢い選択ができるといいなと願っています。もちろん、国や自治体の制度もどんどん整っていってほしいと思います。

 働き続けるだけでなく、『専業主婦』という道もありだと思っています。私も今は働きたいと思っていますが、もし子どもを授かったら、仕事はしないで子どもと一緒にいることを選択するかもしれません。実際、子どもを産んだ後もずっと働いてきたバリキャリの友人が『仕事を辞めて専業主婦になり、子どもの小学校のPTAの仕事を頑張っている。仕事みたいな充実感があって日々楽しい』と言っていました。

 何が自分に合っているか、何をすべきかは、決め付ける必要はないですよね。その場その場で自分や家族に合ったかたちをじっくり検討してみることが大事だと思っています」

文/西山美紀 写真/PIXTA