自社株はお得感より「リスク分散」を考えて

 最後に、自社株もあまりおすすめできません。分散というと、金融資産の中での「分散」を考えがちですが、もう少し広い視点で考えて、お金を稼ぐ先と投資先(または預け先)は分けておくほうが安心です。自社株を購入していた知人(証券会社やゼネコン勤務)は会社が破綻したときに、仕事も、金融資産もまとめてなくしてしまいました。そのショックは計り知れません。

 自社株を購入する場合、購入額に5%程度上乗せして株を買える会社もあるので、「けっこうお得」と思ってしまう人もいるようですが、リスク分散という観点から自分が働く場所とお金に働いてもらう先は分けておきましょう。

 「不安だから」と焦って、金融商品や不動産、個人年金保険などに加入する前に、まずは(1)「イザというときに換金できること」、(2)「長い目で見たときにインフレに勝てること」、そして、(3)「過度な集中を避けること」の3点を意識しましょう。

 その上で、低コストで、シンプルで分かりやすい金融商品を使って、資産形成をしていけばいいのです。

文/竹川美奈子 写真/PIXTA