起業家の奥田浩美さんが提案する、「会社を辞めないという選択」。会社に所属しているほうが、様々な人とつながりやすく、より大きく社会を変えられる可能性を秘めていると奥田さんは言います。あなたの強みを会社で生かすには? 会社を“使って”自分の夢をかなえるには? 書籍『会社を辞めないという選択―会社員として戦略的に生きていく』の中から、明日からすぐに仕事が好きになれる働き方を提案します。

「起業家=偉い、かっこいい」とは限らない

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 私が25年ほどIT業界に身を置いていて感じるのは、なんとなく「会社員でいるより起業するほうが偉い」という空気です。しかし、起業家と会社員の両方の場に身を置いていた自分から見ると、起業家と会社員、どちらが偉いとかかっこいいというのはないと思っています。

 私自身は、会社員も、企業内起業家も、純粋な意味での起業家も経験して、今に至ります。

 起業家としてインタビューを受けたり、講演したりする機会も多くありましたが、企業の代表として人の前で話すことというのは、自分がやってきたことの中で、ほんのわずか1%くらいの「誰が聞いてもかっこいいこと」がほとんどです。

 残りの99%は、それはもう大変なことや泥臭いこと、およそ「かっこいい」からは縁遠いことばかり。私だけでなく、世界的に著名なCEOたちの講演も必ずそうです。おそらく起業した誰もがそうだと思いますし、そういう講演を日本一見続けてきた自負がある私が言うのですから、間違いありません。

 さらに言えば、毎日のように、新聞や雑誌、ネットメディアには、成功した起業家が取り上げられているのですが、それは独立起業した人のほんの一部です。まれには失敗した人にスポットを当てているケースもありますが、それにしたって失敗から飛躍的な回復をさせたからこそ取り上げられているのが普通です。

 それらの例だけを見て起業家に憧れるのは、成功したほんの一握りのアイドルだけを見て「アイドルになればみんなあんなふうにキラキラするのか。いいなあ」と言うのと同じです。想像を逞しくしてみれば、売れっ子のアイドルも華やかな表舞台に立っている時間より、泥臭いことを積み重ねてきた時間のほうがきっと長い。一度も表舞台に立つことなく消えていくアイドルだって、たくさんいるはずです。

 要は、起業したからといって、必ずしも誰もがイメージするような表舞台で活躍する姿になるとは限らないということです。「起業家=偉い、かっこいい」という価値観は成り立ちません。ビジネスで成功するということは、何も起業によるものがすべてではないとも思っています。