“専門性”が変わっていく

 さて、働き方の話に戻します。

 働いていると、会社を辞めたいとか、逃げたいと思う時もあると思います。そんな時、会社を辞めるタイミングは、「次の片足を下ろす先がこの会社じゃない」と感じた時だと思います。

 勤めている会社で1ミリでも違うところに片足を下ろせそうであれば、まだそこでやれることがあるということ。グラグラしはじめたときに、次の足を下ろす先が会社の外だったら、それが辞めるタイミングです。だから私は、辞めることは逃げることだと思っていなくて、「次の一歩を下ろす先」の違いだと思っています。

 こういう話をすると、「両足を下さないと専門性がつかないんじゃないか」と思われるかもしれませんね。

 私は、“専門性”という概念が古いと思っています。さっきお話ししたように、今はビジネスがすごいスピードで変化していく時代です。どの専門性も、40年間も続かない時代になっていると思います。

 それに、同じ職業を続けていても、その中でどんどん変化が起こるはずです。例えば、「お医者さんになったら一生食べていける」と思うかもしれませんが、医療って1年ごとにどんどん進化していきます。歯科医師だって、30年前に学んだ歯の治療技術は、今と違うはずです。ずっと同じ職業を続けていても、実際はそこについていける人しか生き残れていないんだと思います。ついていっている彼らはその世界のなかで、変化に順応していっているし、それができない層はまるっと切り取られていく。

 会計士や弁護士だって、人工知能に取って代わられる職業だと言われています。全て人工知能になるとは思わないですが、弁護士の仕事内容の大半が人工知能で済むとなると、今までどおりの工程をこなすために必要な人数は減っていくはずです。

 つまり、“専門性”という考え方そのものが変わってくると思います。

<後編に続きます>

文/梶塚美帆 写真/竹井俊晴

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