「根回し」を「共感者を増やす」と言い換えてみる

 視点や立場を変えて考えるということは、対社会のビジネス以外でも非常に有効な方法です。例えば、これまで社内で当たり前のように使っていた言葉を、別の言葉で言い換えることで、新しい意識を持つことができます。「根回しが大事」という言葉だと、社内でコソコソと何かをしているように聞こえますが、「自分の周りに共感者を増やすことが大事」と言えば、マイナスイメージは払拭されます。

 これまで社内は社内で、社外は社外で、それぞれに誰かに向き合わなければいけないと思い込んできたかもしれませんが、その視点を変えてみるのです。社内に向けていた視点を、外へ外へと転換してみる。そのためにも、社内で行ってきた会社員ならではのことを、別の言葉で言い換えるというのはけっこう役に立ちます。

 「交渉」という言葉もそうです。自分のやりたいことを社内で通すために、会社と交渉する。こんな使い方をしていませんか。日本語の「交渉する」という言葉には、相手のモノを奪って自分のメリットを確保するというニュアンスが含まれている気がします。でも本来、相手と対立したり、相手から何かを奪ったりする必要はまったくありません。

 それより、社会と向き合うためには、社内はみんなで協力する必要があるのです。だから接点をあえて避けたりはせず、わざわざ対立を意識するような言葉も使わず、きっぱりと「みんなで協力するにはどうすればいいのかなぁ」と声に出して言ってみるのがいいと思います。そんなふうに問いかけられれば、人は「そうだね、どうしようか」「じゃあ、こうしてみようか」と協力する方向に向かえるものです。

 これから社内で必要なのは、交渉よりも対話です。対話が社内のみんなの協力体制を作り、社会と向き合える準備をさせてくれます。