怒りは物事を進展させるか

 これは、あなた自身が何かのプロジェクトの責任者として、部下や後輩をリードしていかなければならない立場になっても、覚えておくべきです。もし部下や後輩がミスをして、お客様に迷惑をかけるようなことがあったとします。人間ですから喜怒哀楽の感情があるのは当然で、「どうしてこんなミスをしたのか」「もっと入念に確認すればよかったじゃないか」といった怒りの感情が心の中に湧き起こることもあります。

 でも私だったら、怒りが頭をもたげかけたその瞬間の0.01秒で、こう考えます。「怒りが物事を進展させますか?」。

 答えはもちろんNOです。私が怒っていることを分からせるのではなく、どういう現象が起きているかを分からせることが何より優先。そのためには怒鳴ったり机を叩いたりして感情を剥き出しにしたところで、逆効果です。

 そこで気を落ち着けて、悲しい顔で「で、どうしようか?」とミスをした部下や後輩に淡々と聞く。相手はこれで十分、怒られて当然の重大なミスを犯したということを意識します。この「どうしようか」という問いかけもとても大切です。

 「どうするんだ、お前がなんとかしろ」と言ってしまうと、それは途端に私の問題ではなく、ミスをした本人の問題になってしまいます。しかしこうした場面では問題を解決することが最優先ですから、誰か一人の問題にしてしまってはいけません。

 「どうしようか」という問いかけには、私もミスをした本人も、一緒に問題解決にあたっているというニュアンスが含まれています。問いかけられた相手は、その言葉に「withという意味を感じ取れるのです。自分のミスに対して、責任者が自分たちの問題として一緒に向き合ってくれているとなれば、本人が責任とプレッシャーを感じて即座に動くものです。