起業家の奥田浩美さんが提案する、「会社を辞めないという選択」。会社に所属しているほうが、様々な人とつながりやすく、より大きく社会を変えられる可能性を秘めていると奥田さんは言います。あなたの強みを会社で生かすには? 会社を“使って”自分の夢をかなえるには? 書籍『会社を辞めないという選択―会社員として戦略的に生きていく』の中から、明日からすぐに仕事が好きになれる働き方を提案します。

最年少が80歳の限界集落

(C)PIXTA
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 2014年10月、株式会社たからのやまの事業の一環として「ITふれあいカフェ肝付」をオープンした現場が、どれほど厳しい現実に晒されているのかをお話ししたいと思います。

 鹿児島県肝属郡肝付町(きもつきぐんきもつきちょう)は、九州南端の大隅(おおすみ)半島に位置しています。人口は1万6536人、世帯数は8159世帯(※)。実はこの町には、人口の過半数が65歳以上という限界集落がいくつもあり、8戸11人の住民の100%が高齢者という地域もあります。

 そこでは、最年少(最年長ではありません!)のおばあちゃんはなんと80歳です。役場の福祉担当者が「おばあちゃん、迎えに行ってあげるからデイサービスに行きましょう」と声をかけても、「私が出掛けてしまったら、ここで一番元気な“若者”が不在になるので心配だし、そんな若いのにデイサービスなんて周りに笑われる」という返事がきます。

 似たような集落は肝付町の中に数キロごとに点在しているので、ケアワーカーさんたちは本当に苦労しています。もともと町がとても広く、車で東西の横断に最短で90分、南北に120分もかかる大きさなのですが、入り組んだ道を辿って高齢者だけの世帯を全戸回ると、車の走行距離は250キロ、丸1日かけても回り切れないといいます。高齢者全員の安否確認をするだけでも容易なことではないのです。そのため、非常に不便な場所には、各世帯にテレビ電話が導入されてやりとりができるようになり、状況は少し改善されています。

※2014年10月31日現在。住民基本台帳により集計し、肝付町役場が公表したデータによる