異なる視点を持つメンバーはこんなふうに役に立つ

 こうした取り組みには、自治体も真剣です。

 肝付町では、役場内のITを推進する部署の中核メンバーとして、保健師の責任者として働いている女性を抜擢しました。このチームは、これまで困難だった高齢者とのコミュニケーションという課題をITで解決することが業務の一つですが、そこに分野を超えて保健師さんが加わったのです。

 彼女はタブレットなどは使ったこともないIT初心者でしたが、長年の経験で培った地域の人的ネットワークと、高齢者に接するためのスキルは誰にも真似できないほどで、この事業に欠かせない人となっています。特にIT推進を行う側が陥りがちな「ITを何の課題に活かすか」というITありきの発想から始まる部分を、彼女は「この課題はそもそもITで解決できるのか?」という原点から切り込んできます。

 このケースは、何か新しい事業を興すときに、今までの組織の延長ではなく、一人ひとりのバックボーンをも生かせる、新しく多様なチームを作ることの重要性を示していると思います。