「集落を活性化させればいい」は大間違い

 ところで、都会の人なら、この集落をもっと活性化させて繁栄させれば、問題が解決に向かうだろうと考えがちです。しかし、それは大きな間違いなのです。町の人は、このまま集落が自然に消滅していくのを現実として受け止めながら、再生はきっとしないだろうと言います。たった数名の住人のために、その奥まった集落にまで町の病院を置くことや、すべての地域に頻繁にコミュニティバスを走らせること、そして福祉レベルを同じように整備することは財政的に厳しくなるだろうと言うのです。

 ある意味、その限界集落に住むお年寄りたちはすでにその覚悟を決めた上で、その地を選んで住んでいる。そこで本当にやるべきことは、その地の終焉を見届けながら、そういう場だからこそ生まれてくる新しい仕組みを見いだし、それを他の消滅してゆくであろう地域の手助けにすること。そんな覚悟をもっているような気がします。都会からやってきて自分たちの発想で何かをしようと思っても、それが地域の人のためにならないこともある。このことを忘れずに、そこに暮らす人たちにとって何が一番良いことなのかを確認し合いながら事業を進めています。

<次回に続きます>

文/成田真理 写真/PIXTA


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