すべてのワーキングウーマンのための総合イベント「WOMAN EXPO TOKYO 2016」が5月21日~22日の日程で、六本木の東京ミッドタウンにて開催されました。キャリアアップやヘルス&ビューティーなど2日間で50以上のセッションが組まれたなか、初日の10時30分からは「スイーツ真壁が語る! プロレス流“あきらめねぇ心”の作り方」と題して、第54代IWGPヘビー級王座であり、お茶の間では“スイーツ真壁”としておなじみの真壁刀義さんのトークセッションを開催。新日本プロレス入門から20年を迎える“暴走キングコング”が、若手時代の壮絶なエピソードのほか、転機となった“気付き”をくれた恩人を語りました。

プロレスラー兼スイーツ男子としておなじみの真壁刀義さん(中央)。聞き手は40年来のプロレスファンでもあるNIKKEI STYLE エンタメ!の苅谷直政編集長(左)。NIKKEI STYLEで「プ女子によるプロレス観戦術」を連載中の広く。さんもトークに参加しました
プロレスラー兼スイーツ男子としておなじみの真壁刀義さん(中央)。聞き手は40年来のプロレスファンでもあるNIKKEI STYLE エンタメ!の苅谷直政編集長(左)。NIKKEI STYLEで「プ女子によるプロレス観戦術」を連載中の広く。さんもトークに参加しました

 リングでは荒々しいファイトを見せつつ、テレビではスイーツ好きというギャップの面白さで、いまでこそ所属の新日本プロレスを代表するレスラーの1人である真壁さん。しかし、20年前の1996年に入門以降、なかなかきっかけがつかめずにブレイクまで時間がかかりました。「挫折を経験するもなにも、日のあたらないクソみたいなレスラーだったよ。口が悪くてごめんな」とユーモアを交えながら話を進めます。

 “あきらめねぇ心”が形作られるきっかけの一つは、まだプロレスに出合う前、予備校時代のある友人から“勉強のやり方”を教えてもらったことだそうです。「生まれもって頭のいいやつっていねぇのよ。勉強のやり方を知っているか知らないかだけで、点数が変わる。これ、根本的なことだよな」。真壁さんの場合、例えば英語に関しては文法と単語力が大切とつかみ、何度も辞書を引いて英単語を頭の中にたたき込んでいきました。結果、高校時代はやんちゃで鳴らしていた真壁さんが、見事帝京大学に合格。ここで、モノになるまで何度も繰り返し努力することの大切さを知ります。

いつもの『IMMIGRANT SONG』に乗って入場。鉄の鎖を首に巻いたスタイルやキメポーズはリング上と同じでした
いつもの『IMMIGRANT SONG』に乗って入場。鉄の鎖を首に巻いたスタイルやキメポーズはリング上と同じでした

 大学を卒業後、新日本プロレスの門を叩いた真壁さん。一度は入門テストに落ちるものの、再挑戦で360人の中の2人に選ばれます。ただし待っていたのは、現在では考えられないような、先輩レスラーからの厳しいしごきでした。言われたとおり真面目にトレーニングに取り組んでいるにも関わらず、先輩レスラーからは口汚く罵声を浴びせられ、時には鉄拳制裁を受けることもあったそうです。「無理難題を押し付けて、残れるものなら残ってみろよというしごきだったね」と当時を振り返ります。

 誰よりも一生懸命に、正しいフォームでやるべきトレーニング数をこなしているのに、常に難癖をつけられる。やりたくないことをやらされていると感じるストレスは、相当のものだったようです。ただ、優しい声をかけてくれる先輩もいました。それが力道山最後の弟子であり、アントニオ猪木などとともに戦った故・山本小鉄さんでした。

 ある日たまたま風呂場で一緒になったとき、「なぜ自分がこんなに怒られるのか、意味が分からないです」と真壁さんは訴えました。すると「馬鹿野郎!」と小鉄さんにも一喝されます。ただ、その後の言葉が真壁さんの人生を大きく動かします。

「誰よりも強くなれ」

 ここで真壁さんはハッと気がつきます。「それまでは嫌なことがあっても、先輩の言うことをちゃんと聞いていれば、いつかはデビューできてスターダムにのし上がれると思い込んでいたんだよ。でも、そんなことは大きな間違いで、ただ言われたことをやっているだけじゃダメなんだよな。誰よりも強くなって、チャンピオンベルトを巻くんだという根本を忘れてた。いつのまにか、守りに入っていたんだよね」。

 早速、次の日から意識が変わったそうです。「やらされるんじゃねぇ。おまえら全員ねじ伏せるためにやってやるよ」。持ち前の反骨心がむくむくと大きくなりました。考え方が変わると成長の速度も上がるのかもしれません。愚直にトレーニングを重ねるうちに、筋力が付き、技術、根性とすべてが整ってきました。4年目くらいにはちょっかいを出す先輩はいなくなったそうです。「てっぺんを目指して頑張っていたら、背中を押してくれる人は絶対いるんだ。それを見逃しちゃだめだ」。ちょっとした気付きを与えてくれた先輩がいたことで、真壁さんの人生は動き始めます。