道を切り拓くヒント

――お二人は、何かを選択する際の決め方はありますか?

毛見 「私はもともと優柔不断でした。でも18歳のときに大切な友人が亡くなり、『明日人生が終わっても良いように』と考えるようになり、以来、思ったことを言い、会いたい人に会うようになりました。それから人生が変わりましたね。恥も外聞も体裁もなく、自分の思ったことだけを見たり聞いたり言ったり食べたりする。そんなシンプルな生き方にしたら、今は悩む時間はあまりありません」

鈴木 「私も気になったことは『悩み』になる前の段階で誰かに話してしまいます。すると問題が具体化して、聞くべき人にちゃんと自分の言葉で質問できたり、あるいは『そんなに大した悩みではなかった』と気づけたりします」

――誰に対して相談すれば良いのか、信頼できる人をどうやって探しますか?

鈴木 「パッと思いついた人に連絡してしまいます。信頼できる相手を探すより、自分が信頼してもらえるように自己開示するほうが建設的ではないでしょうか。誰がベストかなんて、選ぶ方が難しい。自分がしっかり意思をもって対面していれば、相手も応えてくれます」

毛見 「まずはさらけ出してみます。以前は相手になめられたくない気持ちが強く、分からないことも分かっているフリをしていたのですが、起業すると、そんな姿勢のままでは何も進みません。自分が分からないことをさらけ出してみると、意外に相手も知らなくて、相互理解が深まるきっかけにもなります。相手の目には逆に勇気や誠実さと映り、信頼してもらえるんですね」

働き続けるために必要なスキルとは

――キャリアを重ねて一生仕事を続けていくために、20代・30代でやっておくべきことを教えてください。

毛見 「私の会社が女性スタッフがほとんどで、働き方も家庭環境も千差万別です。そんな中で働き続けるために必要なことは二つ。その人でなければできないスキルがあること、できるだけ貢献しようという姿勢を持つこと。

 一つ目のスキルとは、いろんな経験から生まれるものだと思います。自分を語れる要素を、仕事の経験から三つ考えてみてください。例えば、『英語』×『営業』×『IT』のように。三つを掛け算すると、世の中にその三つができる人は少ないはず。そういう意識で自分をユニークな人材にしていけば、年齢や環境が変わっても、自分を必要としてくれる会社は必ずあると思います。ちなみに、例に挙げた英語とITのスキルを持つ人って、実は日本にはほとんどいないです。私の場合、イギリスにあるインド人の会社に依頼しています。

 二つ目の貢献する姿勢とは、自分の権利だけではなく、お互いに良い働き方をイメージして何でも発言していく姿勢ですね。そうすれば作用・反作用のように、会社側ともお互いにうまくいくはずです。

鈴木 「今の自分を認めて、“自己肯定力”を付けることが大切だと思います。今、自分ができることを小さくても、何でもいいので認めて、何事も笑顔で前向きにとらえることが大切。そのほうが仕事が楽しく進みますよ。

 私は月に300人くらいと名刺交換しますが、印象に残る方は、自信があるというよりは笑顔で仕事に前向きな方。そういう方は、『また会いたいな』と思わせます。たとえ今この瞬間に持っている力が小さな力でも、『役に立とう』という前向きな姿勢があれば、必然的にご縁が回ってくるんだと信じていますし、実感しています」

 働く女性なら強く共感できる言葉、深く心に刻んでおきたい言葉がいっぱいの、充実したトークセッションでした。自己開示することでキャリアの方向性が見えてくる。自己肯定することで前向きに、仕事を続けていく。すぐに転職を考えていなくても、働く女性にとっての至言がいっぱいの講演でした。なお現在、転職を考えている女性は、以下のサイトも参考にしてみてください。

文/越智理奈 写真/古立康三

■参考サイト
転職支援サイト「日経ウーマンキャリア