交渉に及び腰にならないことがリーダーの評価につながる

アクセンチュア執行役員・堀江章子さん
アクセンチュア執行役員・堀江章子さん

 続いて登壇したのは、アクセンチュア執行役員の堀江章子さん。テーマは「女性役員に必要なリーダーシップの育成について/ネゴシエーション(交渉力)」だ。

 堀江さんはまず、リーダーシップを「方向性やビジョンを示し、目標達成に向けてメンバーを導く力」と定義。その上で、リーダーシップを構成する要素として「信頼性」「EQ」「エグゼクティブプレゼンス」「影響力」「強いネットワーク」「グローバルプレゼンス」「俊敏性」「交渉力」の8つを挙げた。

 この中で女性が最も苦手とするのが、交渉力だと堀江さんは指摘。女性の役員登用を遠ざける一因にもなっているという。

 「リーダー、特に役員などの上級職になるほど、交渉に臨む機会は増えます。しかし、調査データによると、女性は交渉を『対立』と捉えてしまい、『対立したくない』という理由で回避しがち。それは大きな機会損失です。例えば人事考課のための会議で自分が率いる組織の成果を主張し、高い評価を得るのも交渉の一つ。これを対立と捉え、積極的な姿勢で臨めないとどうなるか。部下たちの評価、ひいては給与を下げることになりかねません。交渉から『逃げる』ことで生じる機会損失によるダメージは、大きな組織を率いるリーダーほど大きくなります」(堀江さん)

 女性が交渉と向き合う上ではもう一つ、壁があるという。それは「暗黙の常識」だ。

 「女性は『こうあるべき』という思い込みにとらわれると、行動が制約されがちです。交渉で強く出て、周囲から『女性らしくない』と思われて関係性が悪くなるのではないかと危惧する女性は非常に多い。繰り返しますが、仕事の現場でリーダーがはっきり意見できずに交渉に『負ける』ことは、チーム全体の評価を落としかねません」

 交渉は交渉。はっきり意見を述べて結果を出し、顧客やチームメンバーの信頼を得ることが大切だ。意見した結果、交渉相手が嫌な思いをしたとしても、それが人間関係に影響するわけではないと堀江さんは話す。

 では交渉の成否を左右するポイントとは何か。堀江さんは下記の7点を挙げた。

(1)利益・目的の明確化
(2)選択肢の洗い出し
(3)正当性
(4)代案の定時
(5)コミットメント
(6)良いコミュニケーション
(7)リレーション(人間関係)

 この七つのポイントは連携している。相手と関係性が築けて、円滑なコミュニケーションが取れれば目標が明確になり、取り得る選択肢についてフェアな議論ができる。議論の結果、合意が得られなければ代案を提示すればよく、合意が得られれば実現に向けて行動する――といった具合だ。

 「女性には『人のためなら頑張れる』という強みがある。チームのために、組織のためにと考え、苦手意識を払拭して取り組んでください」と堀江さんは会場の女性たちにエールを送り、講演を締めくくった。