ブラック企業で働く彼のコンプレックス

 直子さんが34歳のときに付き合って4カ月で別れてしまった男性も、女性との心地良い信頼関係を築くのが苦手だったようです。

 その男性とは、旅先の離島で知り合い、読書の趣味などでも意気投合したという1歳下の俊行さん(仮名)。5年間は友人関係だった二人は、俊行さんが登山中にケガをして入院し、直子さんが親身になって面倒をみたことがきっかけで親密になりました。

 「でも、付き合い始めたらお互いを過剰に意識するようになってしまいました。彼は私の学歴や勤務先、収入などを気にしている感じが伝わってきましたね。何かにつけて『君は頭がいいもんね』みたいなことを言われると、話がスムーズにいかなくなってしまいます」と直子さん。

 「彼はブラック企業のような会社に勤めていて、ろくに休みもとれなかったので、有給休暇で自由に旅行をしている私を近くで見るのも嫌だったのかもしれません。車の運転が上手で山にも詳しい彼に、いろいろ教えてもらうのが私は楽しかったのですけど……。男性の、みみっちい感じが見えてしまうと恋愛は続かないものですね」

 直子さんの率直にして的確なコメントが僕の耳に突き刺さります。なぜ僕たち男性は「みみっちい感じ」になってしまうのでしょうか。それは、学校名や勤務先名に代表される「社会的地位」や「年収」といった、わかりやすい「パワー」で自他の優劣を勝手に決め、元気になったりへこんだりする習性が子どもの頃から身についてしまっているからです。スポーツが得意な子どもが自然とクラスの人気者になるというのが一例ですね。