心の支えになっていた地元の彼氏

 この連載の取材対象は、頑張って働いて一人暮らしできる程度以上の収入を得ているアラフォー独身女性。仕事と恋愛の状況を聞き取り、僕の勝手な感想も交えながら文章にしています。目的やゴールは特にありません。「こういう恋愛をしている人もいるんだな」とケーススタディにしてもらえるといいなと思っています。

 「なるほど~。確かにこの年齢になると恋愛事情を話す機会が少なくなりますね。特に会社では口にしません。オジサンたちの格好のネタになってしまいますから。親しい女の先輩は社内結婚をすることが決まっていますが、私以外の誰にも話していないみたいです。他の人たちはどうしているんだろうと気になることもあります」

 章子さんによれば、30歳を過ぎたあたりから特に仕事関係の人とは恋愛や結婚について話しにくくなるとのこと。仕事のできるアラフォー女性は、男性からも女性からも嫉妬の対象になりやすいため、プライベートなことを理由にして陰口を言われるのは避けたいですよね。仕事関係の人とはSNSなどで一切つながらないようにしている人も少なくありません。

 でも、酒場の友だちならば平気ですよね。利害関係がないので気軽に話せます。20代の頃からさかのぼってあれこれ聞かせてくださいとお願いすると、章子さんはリラックスした笑顔を浮かべてくれました。

 大学を卒業するまでは関西地方にいた章子さんは、大手の日本企業への就職で上京。風呂トイレ共同の女子寮で暮らしながら、法人営業部門に数少ない女性の総合職として配属されました。

 「知識ゼロからのスタートでしたが、すごく鍛えてもらったと思っています。上司や先輩から言われた通りに一生懸命に働いていたら、3年目ぐらいから驚くほど成績が良くなりました。でも、最初はつらかったな……。地元に帰りたい、とずっと思っていました」

 仕事のプレッシャーと孤独感に押しつぶされそうになっていたとき、地元の友だちが京都で結婚式を挙げました。そこで知り合ったのが、4歳年下の理容師である貴彦さん(仮名)です。

 「約束の時間はちゃんと守るし、気遣いもできて、ひょうきんなところもありました。頭の回転も速い。好きだったな……。今までの人生で、ずっと一緒にいたいと思えた男性は彼だけです。太っていてすごく優しい彼に、東京の仕事でしんどかった私は寄りかからせてもらいました」