EU離脱を主導するメイ首相には頑張りを評価

池上 イギリスのメイ首相はヒョウ柄が大好きなおしゃれ番長です。ヒョウ柄のパンプスというだけでも驚くのに、微妙に違うヒョウ柄を何種類も持っているそうです(笑)。さて、メイ首相の評価は……。

■イギリス/テリーザ・メイ首相

池上「この調子で頑張りましょう」

増田「もっと頑張りましょう」

池上 イギリスはEUからの離脱を決めましたが、他国もEUから離脱することを心配して、ドイツのメルケル首相などはいろいろな嫌がらせをしています。その中でメイ首相は何とかスムーズに離脱しようと頑張っている。メイ首相は「メイ調子(名調子)」だ、という評価です(笑)。

増田 私も似ています。もう決めたことだから頑張ってほしいという思いを込めています。

池上 最近、ロシアでイギリスのスパイをしていたセルゲイ父娘の暗殺未遂事件がありました。ノビチョクという旧ソ連軍が開発していた毒ガスが使われたようですね。

増田 でも、イギリスには明るい話題もありますよ! そう、今日(5月19日)はヘンリー王子の結婚式です。番外編でヘンリー王子の評価もしましょう。

池上 私は「よくできました」です。アフリカ系アメリカ人の母をもつ女優のメーガン・マークルさんを新婦として迎えるイギリス王室はすごいですよね。

増田 私は「この調子で頑張りましょう」です。マークルさんはボランティアや社会貢献活動に力を入れるなど故・ダイアナ妃とも似ているから、ヘンリー王子はそうした部分にも引かれたのでしょう。

池上 イギリス王室の結婚式を見ながら、他国の皇室のあり方にも思いを馳せたいですね。

ミュンヘンにできた壁に世界が騒然! その意外な理由とは……

■ドイツ/アンゲラ・メルケル首相

池上「この調子で頑張りましょう」

増田「もっと頑張りましょう」

増田 「決められない首相」といわれたメルケルさんが唯一決めたのが、評判の悪い難民の無制限受け入れです。これは2015年にミュンヘンで撮影したものですが、1回電車が到着すると4000人、多い日は1日2万人、1年で109万人以上の難民がドイツに入り込みました。5月2日から現地でその後の様子を取材しましたが、今が正念場なので頑張ってほしいですね。

現地に足を運んで自分の目で見て取材したことを語ってくれた増田さん
現地に足を運んで自分の目で見て取材したことを語ってくれた増田さん

池上 治安の悪化や反発もあるし、ここにきて支持率も落ちてきている。でも一生懸命EUを引っ張ろうとしていますよね。ところでミュンヘンの難民収容施設との間に住民が壁を作ったというニュースがありましたが、増田さんは見に行ったそうですね。

増田 壁はコンクリート製ではなく、針金のような枠に石を詰めたような物でできた簡易なものでした。町の人に聞いたら「若い元気な難民が騒いだりサッカーしたりしたらうるさいから、防音壁を作ってほしい」と、市に申し立てた結果だそうです。

池上 ベルリンの壁が想起されるから大騒ぎになって、世界中に発信されてしまったんですね。

増田 この施設は、難民の中でもレイプされたりDVの被害に遭ったりした女性を支援する団体が使うことになりました。妊婦やシングルマザーなど静かに暮らす女性たちが入ることになり、騒音も起きないから壁の意味はなくなったんですって。

池上 難民の中でもさらに弱い立場、本当に助けが必要な人のシェルターのような施設になっているわけですね。そういうことって、行ってみないと分からないですね。

地道な地域活動に支えられて改革を推進するマクロン大統領

池上 さて、次はフランスです。

■フランス/エマニュエル・マクロン大統領

池上「よくできました」

増田「この調子で頑張りましょう」

増田 フランスでは今、国鉄などの労働組合が大掛かりなストライキを実施していますね。マクロン大統領も評判を落としています。

池上 フランスは労働者の権利が守られていて簡単に解雇できないから、若い人の失業率が高い。そこで雇用を流動化させようとしたら、既得権を持つ人が反発しています。

増田 大学の改革も進んでいますね。大学生たちがマクロン改革に怒ってストライキしたりキャンパスを占拠したりしていますよ。

池上 フランスはバカロレア(高校卒業検定試験)に合格すれば誰でも大学に入れます。でも、マクロン大統領が「成績順で入学させたらどうか」と言ったら、学生が怒ってストライキに突入しました。

増田 ただ、マクロン大統領の支持者はSNSで呼びかけて毎週2回くらいずつ、各地域で自分たちの政策を説明する機会を設けています。労働大臣もカフェで規制緩和の説明をするなど、地道に活動しています。

池上 加藤勝信厚生労働大臣がスタバに来て、働き方改革について皆さんと会話するようなもので、日本ではちょっと考えられないですよね。

 こうやって世界を見ることが、私たちが言及していないどこかの国の政治のことを考えるきっかけにもなります。ある国の外側を描くと別の国が浮き彫りになることもあるから、そうやっていろいろなニュースや情報を見ていただければと思います。

文/加納美紀 写真/稲垣純也、中村嘉昭