ヴィーナス好きは「複雑で経験豊富なオトナ女子」

 明るく活動的、スポーツが得意でアイドル志望と、うさぎを除く4人のなかでは最もセンター感のあるセーラーヴィーナス(愛野美奈子)。おバカキャラがうさぎとかぶっており、うさぎを除く4人(内部太陽系戦士)のリーダー格ですが、それこそがヴィーナス好き女子の複雑な心境の受け皿になっています。

 幼い頃のごっこ遊びにおいて、マーキュリーやマーズやジュピターほど、特徴的なキャラクターに自己同一化するような思い切りはない。かといって自分はヒロインとしてふるまえない(ふるまう力量ではないと感じている)。そんなとき、ヴィーナスは“ちょうどいい落とし所”です。

 なぜなら、かつて『セーラーV』という作品でヒロインを張っていたヴィーナスは、ある意味で「裏ヒロイン」。センターで出しゃばりたくはないけど自尊心は満たしたい女子にとって、ヴィーナスは格好の自己同一化ポジションなのです。

 また、ヴィーナスは5人中もっともオトナの恋愛を経験しています(イギリスでのセーラーV時代に、意中の人と尊敬する先輩がくっついてしまい、失意のうちに帰国しました)。それゆえ、彼女のバカは天然バカのうさぎと違って、「いろいろあったうえでたどりついた、キャラとしてのバカ」。

 そんなヴィーナスに肩入れしてしまう女子は、複雑で波乱の人生を自ら呼び込む体質の持ち主でしょう。でも、それを引き受けるだけの度量もまた持ち合わせていると思われます。