「序列」ではなく「役割分担」という意識

 では、セーラームーン世代がチームでもっとも大事にしていることはなんでしょうか。それは構成員それぞれの「役割分担」です。断じて、組織内の「序列」ではありません。

 セーラーチームの戦い方を思い出してください。セーラームーン以外の4戦士それぞれが敵を攻撃して弱らせ、セーラームーンがフィニッシュを決めます。4戦士だけでも、セーラームーンだけでも、敵に勝てません。ここには明確な役割分担があるのです。

 リーダーは一応セーラームーンですが、序列に基づいた指揮命令系統があるわけではありません。セーラーチームは、上下関係のない役割分担だけが徹底されている、非常にフラットな組織なのです。

 さらに言えば、セーラー戦士ひとりひとりの能力は異なりますが、そこには優劣も貴賎もありません。炎系の攻撃が効く敵もいれば、水系の攻撃が効く敵もいるので、その都度4戦士の攻撃担当が変わります。得意分野に基づいた役割分担が設定されているにすぎないのです。

 サッカーにたとえてみましょう。シュートを決めるのはひとりの選手ですが、彼だけでは試合には勝てません。敵にプレッシャーをかけて彼へのマークを外す選手、こぼれ球をクリアする選手、守りを固める選手、彼にパスを出す選手。チームメイトの役割分担が徹底されてはじめて、彼はシュートを打つチャンスを得られます。

 たしかに、観客から黄色い声援を浴びるのはシュートを決めた彼だけかもしれません。しかし、他の選手がいなければ、彼はボールに触れることすらできなかったでしょう。構成員に本質的な意味での序列はありません。セーラームーン世代にとって「チーム」とはそういうものです。

 仕事も同じです。ある営業部員が大口の契約を取れたとしましょう。その裏には、多くの人の役割分担がありました。

 データを集めて丁寧な営業資料を作ってくれた派遣社員のメグミちゃん、迅速に契約書を仕上げてくれた法務部の山田女史、提案書にアドバイスをくれた鈴木先輩、ペーペーの頃に客先での振る舞いを教えてくれた小須田部長、折れそうな時にサシ飲みで励ましてくれた同期のよし子――。

 彼らがいなければ、きっと契約は取れませんでした。彼らもある意味でチームメイトなのです。