『美少女戦士セーラームーン』を観て育った子どもたちも、もうアラサー世代。『セーラームーン』は社会現象になっただけでなく、現在のアラサー女子の仕事観や恋愛観に大きな影響を与えています。そんなセーラームーン世代について、『セーラームーン世代の社会論』の著者である稲田豊史さんが、作品を紐解きながら鋭く分析していきます。

個性が邪魔になる息苦しさ

同調圧力とは無縁の友情を築くセーラームーン世代

 日本では、女性だけの集団内にしばしば「同調圧力」が吹き荒れます。学校の教室内、古い体質の女性中心部署、ママ友コミュニティ。そこでは、メンバー同士の価値観や美的センスは「似通っているべき」であり、知的レベルや生活レベルも「同じ」であることが望まれます。

 独創的な思想やファッションセンス、周囲がついてこられないような学力や賢さ、一歩先を行くキャリア観や結婚観はすべて「悪目立ち」であり、他メンバーの存在を脅かす「出る杭」にほかなりません。個性は邪魔なのです。

 教室の例を挙げましょう。セーラームーン世代より1回り以上歳下であるローティーン少女向けファッション誌には、「いかに教室内で孤立しないよう1年を過ごすか」のテクニック集が山のように載っています。クラスの男の子には好印象だが同性からも嫌われない、ちょうどいい髪型やファッション指南。集団になじむための無難キャラの確立法。LINEグループから外されないための当り障りのない言葉遣い集。今は、中学生のうちからこんなことを学ばなければならない時代です。

 こと男性は女性に対して「人は人、自分は自分でいいじゃない」と軽く言いますが、現実はそう簡単ではありません。彼女たちは教室や職場、ママ友コミュニティに一度所属すれば、容易に逃れられないからです。教室なら最低1年。職場なら異動か退社まで。地域の町内会などに根ざしたママ友コミュニティの場合、下手をすれば引っ越さない限り、その同調圧力におとなしく屈するか、ものすごいエネルギーを使って孤高を貫かねばならないのです。

 馬鹿馬鹿しくはありますが、これはもう、横並び意識が染み付いた日本人の国民性のようなものですから、どうしようもない。しかし、そんな馬鹿みたいな国民的価値観に、これからデカい風穴を開けてくれそうな存在が、セーラームーン世代です(前置きが長くなりました)。

 どういうことなのか、次のページでご説明します。