フランスで人気がある本当の理由

 フランスでは90年代、日本のアニメを放映する子供向け番組枠があり、多くの少女たちが夢中になって観ていました。プロポーション抜群の少女たちが華麗に戦うカッコ良さや、耽美的な変身シーンが受けた、という分析もあります。

 しかし筆者としては、作中で描かれる「愛の多様性」も、支持される理由のひとつではないかと踏んでいます。

 フランスは世界でもトップクラスの、「多様な愛のかたち」が活発に議論される国で、セクシュアリティに関して制度的な不平等が少ないことでも知られています。なかでも99年に制定された民事連帯契約、通称「PACS法」は非常に先進的。法的に婚姻できない同性愛者カップルも、一定の権利を享受できる法律で、施行後またたく間にヨーロッパ各国へと広まっていきました。そんな国で『セーラームーン』が人気を博したのは、とても合点が行きます。

 また、フランス人女性は、自分の考えや権利をかなりはっきり主張します。女性性は大切にしますが、男性に媚を売るようなファッションや言動は軽蔑されます。知的で自立的であることを望み、同調圧力に屈しないことを善しとします。前回の記事「彼氏持ちの友人との接し方はセーラームーンに学べ」で言及した、セーラーチームの価値観にそっくりではないでしょうか。

 そんなフランスには、国民的英雄と崇められている女性がいます。