不安をかき消すほど没頭できるものを見つける

 もうひとつは、わき目もふらず没頭できるものを見つけることです。思い切りやりたいことをやる、と先ほど述べたこととも通じます。「自分はこれがやりたい」と思って前に進んでいるときには、人は不安を感じません。感じたとしても、それ以上に進む力が大きければ、不安に沈む心を持ち上げることができます。

 とはいえ、「私には打ち込めるものなんてない」という人もいるはずです。そんなときは、ささいなことでも良いので集中するトレーニングをしてみましょう。あるダンサーの方が、とても簡単にできるトレーニングを教えてくださいました。

 それは、足の指を1本ずつ動かしてみること。これはダンサーが全身を美しく見せるために、体のすべてのパーツをコントロールするトレーニングのひとつとして行っているそうですが、このトレーニングに集中している間は、絶対に不安を感じないといいます。それ以外のことはすべて忘れるほど、足の指先に全神経を集中しないと、指が思うように動かないからです。確かに、不器用な私が試してみても、足の指を動かすことに一生懸命になり、仕事のこともお金のこともすっかり考えられなくなります。とても小さなことですが、やってみると、そういえば、最近こんなにひとつのことに集中したことはほとんどなかったことに気づきます。ほんの1,2分でも試してみると、物事に集中する精神力も鍛えられるような気がします。

 もちろん、問題から目を背け、解決の努力をしないのはよくありません。でも、私たちの人生にはあまりにも問題やしがらみがありすぎて、自分の心の声に真正面から向き合うことを忘れがちにもなります。それが、かえって不安を大きくしてしまうこともあります。現実を直視し、不安と向き合うこと、そして、不安を自覚したうえで、それをも超えるものに集中すること。そんなスタンスが、お金の面でも、人生の面でも、不安をうまくコントロールしながら進むカギではないでしょうか。

 皆さんがこの1年、少しでもお金と楽しく付き合い、実りある人生の一歩を進めるようことを、これからも願っています。

文/加藤梨里、イラスト/梶塚美帆

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