貯蓄は不安を消し去るための手段

 「何となく不安」な心理には、女性の社会的な立場や高齢化が影響していると思います。最近は「下流老人」「老後破産」といった言葉が躍り、社会全体に老後資金への不安が高まっています。女性は男性よりも長生きで、2人に1人は90歳を迎えるといわれていますから、より強い危機感があるようです。20代ですでに老後資金を貯めている人も珍しくありません。

 老後資金は、仮に60歳で退職してから90歳まで生きると、生活費だけでも約5000万円は必要です。ここから公的年金の収入を差し引いても、退職金や貯蓄で約2000万円が必要です。30歳から60歳までの30年間で貯めるなら、年間約66万円、月に5万円以上になります(※)。

 もしずっとシングルだったら、この老後資金を自分で工面せねばなりません。結婚すれば夫婦で必要な老後資金は少々変わるとはいえ、妊娠・出産をすれば仕事に制約が出て収入ダウンのリスクがあります。また、女性を取り巻く雇用環境は改善傾向にあるとはいえ、いまだに残る賃金格差などのハンデもあります。そんななかで稼ぎ続けられるのかを考えると、老後への貯蓄は気が遠くなる道のりに感じられます。これが、「働けるうちに稼いで貯めておかねば」という切迫感につながるのでしょう。女性にとっての貯蓄は、先行き不透明な人生の不安への、ひとつの対抗策なのかもしれません