真実と現実、どちらが自分にとって大切?
相手を大切に思うきっかけって、何でしょうか? それは過ごした時間の中で生まれるものだと私は思います。たわいない会話を含めたありふれた日常があって、その人を少しずつ大切に思っていく。
しかし、大きな隠し事があることを知ってしまうと、これまでのたわいない会話も、すべて嘘だったのではないかと疑ってしまう。そんなふうに思いたくないから、その隠し事を掘り返してでも本当のことが知りたいと思ってしまうのは仕方のないこと。
目の前の現実を疑ってしまうと、すべてを知ること以外に落ち着く術が見つからなくなってしまうし、すべてを知ってしまったら今の生活や二人の関係性が壊れてしまう恐怖にもおびえることになってしまう。
過去を知ることでより大切に思えるだろうか
隠し事を嘘だとしか捉えられない気持ちは分かります。しかし過去に向き合うこと、掘り返すことには覚悟が必要だと本作は教えてくれます。
大切な人の、今この瞬間を優先するのか?
大切な人の、すべての過去を含めて判断したいのか?
本作で由加利は「嘘をつかれていた」ということに対する怒りから、衝動的に過去の詮索を始めます。それが正しいことなのか、自分にとってよい結果を生むのか分からないまま、何度も葛藤し、苦しみ、過去を知りたい欲求と、知ることの恐怖の間でもがきながら、少しずつ真実に向かっていきます。
その苦しむ姿をみていると、何があっても向き合える覚悟ができないのであれば、真実を知ろうとしない選択もありかも、と教えられます。
あなたは、本作を見てどう感じるでしょうか?
それではまた。映画カタリストのゆうせいでした。
『嘘を愛する女』
全国東宝系にて絶賛公開中
配給:東宝
(C) 2018「嘘を愛する女」製作委員会
文/永井勇成