無理することで変えられること、無理してでも変えたくないこと
本作の登場人物の多くは、仕事、プライベート、人間関係、お金の問題、恋愛など、自分のしていること、置かれている環境に悩んでいます。
それは、無理をすることで変えられることもあれば、どんなに無理をしても変えたくないことでもあります。
自分のアイデンティティーを守りたいが、そのアイデンティティーこそが自分を苦しめていることに気が付いている。だけど、どうすればいいのか分からない。誰も助けてはくれない。むしろ、自分の軸になる部分であるからこそ、他人に助けを求められないジレンマに苦しむ。
「神様でも誰でもいい、頼むからこの人を幸せにしてあげてください」。大声で願うのではなく、心の中で、そっとつぶやくように願いながら鑑賞している私がいました。
月明かりで余韻を楽しめる人にこそ響く作品
冒頭で一人でゆっくりと味わう一杯のワインについて触れました。飲み終わってからの余韻こそが醍醐味であることも。
本作はタイトルにムーンライトとあるように、何気ない帰り道の月明かりで、その日一日に起きたことの余韻を楽しめる人にこそ響く作品です。
格好をつけるつもりはありません。真冬に熱々のラーメンを食べて、外に出た時の寒さが心地よいと思うことってあるじゃないですか。そんな感じの余韻を、この作品では感じずにはいられないのです。
ラストシーンからあなたは何を感じるでしょうか。ぜひあなただけの余韻に浸ってください。
それではまた。ご存じ、ゆうせいでした。
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2017年3月31日(金)、TOHOシネマズシャンテ他にて全国公開
配給:ファントム・フィルム
文/永井勇成