働く女子たちをもっと元気にする連載「ビタミンシネマ」。戦時中を描いたよくある作品だと思っていたら、生きていることに感謝してもしきれないほどの衝撃を受けました。自分のいるこの世界の片隅こそが、一番大切にするべきものだと気付かされます。のんさんのほんわかした声も良いんです。
ただの片隅にある何気ない幸せに気付かされる
自分の生きている場所は、世界のほんの片隅でちっぽけだと感じることは、大なり小なりあるかもしれません。田舎で生まれ、都会に憧れたことがある人ならより一層その思いは強いかもしれません。しかし、ちっぽけだと思っているその片隅にこそ幸せがあることを、これでもかと実感できる内容です。
今回紹介する「この世界の片隅に」の舞台は、広島県の呉市です。誤解を恐れず言ってしまえば、戦時中であっても「田舎」と呼ばれるところ。しかし、田舎だとか都会だとか、そんな着眼点はちっぽけに過ぎません。世界の片隅で生きる幸せも、そして、その「片隅」を変えることも、自分はできるのではないかと気付かされます。
太平洋戦争中の広島・呉に、18歳の少女「すず」が突然の縁談で嫁ぐことになる。配給物資がだんだん減っていく中でも、すずは工夫を凝らして食卓をにぎわせ、衣服を作り直し、時には好きな絵を描き、毎日のくらしを積み重ねていく。
昭和20年3月。呉は、空を埋め尽くすほどの艦載機による空襲にさらされ、すずが大切にしていたものが失われていく。それでも毎日は続く。
そして昭和20年の夏がやってくる――。
現代と比較しても意味はないと思っていたけど
戦時中と現代を比較されることはよくありますが、世界情勢もテクノロジーも何もかもが違いすぎて、あまり意味はないのかもしれないと思っていました。
住む世界や時代が違うんだから、それを言ってもしかたない。もしも戦時中だったら……なんて考えは、宝くじで1等が当たったらどうしようと考えるのと同じレベルなのかもと。
大きな間違いでした。
本作の主人公・すずは、都会の広島市から田舎の呉市に嫁ぎ、人生が大きく変わります。それでも自分と自分の周りの人間が笑顔で暮らすための工夫を凝らします。その努力は現代の目線から見ても、色褪せることはありません。必死で考え抜くことに、戦時中も現代も、世界の「片隅」も「中心」も関係ないのです。
学ぶべきことは、不便な時代の不幸な出来事ではなくて、目の前の状況にどう向かい合うかってことだったのです。