悟ったつもりでいることが1番危ない
このまま一緒にいると、相手に迷惑を掛けてしまう。そう思うこともあるでしょう。恋愛に限らず仕事においても同様です。しかし、果たして自分の思う迷惑とは、相手にとって本当に迷惑なのでしょうか。
迷惑ならば迷惑だと言ってくるはずですし、むしろ自分も言うようにすべきなのです。勝手に悟ったり、逆に相手に自分の気持ちを悟ってくれと思うことが、修正できないほどのゆがみを生むと私は思います。
大切な人に迷惑を掛けてまで一緒にいたくないと思いますか? 相手は一緒にいられるだけでいいと思っているかもしれないのに。
本作は、タイトルに「スター誕生」と入っているだけに、きらびやかなサクセスストーリーが展開するのだろうと予想できます。しかし、誰の、いつの段階をスターとするのかは、それぞれの見解で違ってきますし、そもそもスター本人の自覚も大きく関わってくるところです。
アリーをデビューさせたジャクソンは、スター誕生の世話をしたと言えます。しかし、あることがきっかけで、今度はジャクソンがアリーの世話になることに。
誰かの世話になることと、世話をすることは似ていて、そして紙一重で、それが入れ替わりながら人生は進んでいくと言えます。勝手なエゴに着地しないよう戒めてくれる作品でした。ぜひ劇場でご覧ください。
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さて、最後にみなさま、約2年半にわたってお送りした本連載「ビタミンシネマ」は、今回が最終回となります。
初回は2016年の7月……なんと今回を含め60本も書いてまいりました。私自身、一番の長期連載でしたし、思い入れも深すぎるものがあります。毎月しっかりと作品と向き合い、「ただの映画紹介」にならないように気をつけてきました。
これまでお読みいただいたみなさま、本当にありがとうございます。映画が大好きな私が1本も原稿を落とさず書くことができたのは、みなさまのおかげです。
まだまだ映画について書きたいことは湯水のように溢れ出てきますので、どこかで私のコラムを見つけ、読んでいただけたら幸いです。
ぜひまたお会いしましょう。映画カタリストのゆうせいでした。
「アリー/スター誕生」
配給:ワーナー・ブラザース映画
(C) 2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC
文/永井勇成