第1回「号泣の不本意な異動だったのに全く後悔していない理由
第2回「『私はダメ』自虐の無限ループ あなたのせいじゃない」(今回はここ)

 前回の記事「号泣の不本意な異動だったのに全く後悔していない理由」で、「女性たちは自分の力を正確に見積もることが苦手で、『私なんかダメ』『この程度しかできない』と思いがちで、そこに心理的なワナがある」と書きました。今回はそのことについて書きたいと思います。あなたは心理的なワナに陥っていませんか。

「キャリア・ミスト」…女性は霧の中を歩いている

 あなたの会社にはベテランの女性社員はいますか。女性の先輩がいますか。私は今年入社して33年目(!  自分で書いてもうこんなにたったのかとびっくりしています)なのですが、そういう女性はいますか。また、会社の中に女性がどれだけいますか。女性比率は2割ですか。3割ですか(この比率はとても重要です。後述します)。

 職場の多くは男性で占められています。男性は会社で多数派です。きっとあなたの会社でもそうでしょう。また、課長、部長、役員、社長も男性ということがほとんどでしょう。そうすると、男性は、新入社員の頃から、「ロールモデル」(=働く上でこうなりたいと思うお手本)が獲得しやすくなります。「10年後、20年後、30年後はこの会社で自分はこうなっているだろう」というキャリアの見通しが立つのです。

 かたや女性はどうでしょうか。女性は会社で少数派です。マイノリティーなのです。

まだ正社員で活躍し続ける女性はマイノリティーなのです (C) PIXTA
まだ正社員で活躍し続ける女性はマイノリティーなのです (C) PIXTA

 たとえ職場に女性がいたとしてもそのすべてが正社員というわけではありません。業界や会社によっても違いますが、正社員に占める女性の割合は2割くらいでしょうか。また、女性は働き続けるのが難しいという現実もあります。最初に妊娠がきっかけで5割の女性が職場を去ります。ベテラン女性社員ほど人数が少なくなるという先細り傾向があるのです。働き続ける女性が少ないので女性管理職の数もまた少ない。4割程度の企業では、まだ、課長相当職以上の女性管理職がいません。

 つまり、女性は組織の少数派であり、長く勤め続ける人も少ない。そのため、女性は男性と違って、「こうなりたい」と思うロールモデルが見つけられず、「自分は将来こうなるであろう」というキャリアの見通しも獲得できにくい状態にあります。

 自分のキャリアの見通しが不透明であることを、学術用語で「キャリア・ミスト」といいます。

 将来のキャリアに霧がかかって先が見えないということです(この言葉を大学院で学び、「なんとぴったりな言葉だろう」と思いました)。つまり、日本の働く女性たちは霧の中を歩いているのです。それであれば、不安なのも迷うのも当然ですよね。

 男性はいずれ組織を担う後継人材であると期待され、後継者になるような仕事も与えられます。しかし、女性は期待もされないしそのように育成もされてきませんでした。

 「キャリアに対して不安や迷いを抱くのは、自分が弱いから。だから自分はダメなんだ」
 「昇進のチャンスがあるのにそれを受ける自信がない。力不足の自分がいけないんだ」

 と自分を責めてしまいがちなのが女性です。これが心理的なワナです。自虐の無限ループに陥りがちな女性たちに対して、私はこう伝えたいです。

 「それはあなたのせいではない。だって、私たちは霧の中を歩いている、いや、歩かされているんだから、不安に思うのは当然だよ。そういう構造があるんだから」と。