「だから『女性』のお前はダメなんだと思われる」という恐怖
私は5年間、日経WOMANの編集長を務めて、50歳のときにその一つ上の職位である発行人に昇格しました。そのときに味わった心理的なワナについてお伝えしましょう。
日経WOMANも日経ウーマンオンラインもほぼ女性だけの編集部でした。全員女性で、ワイワイガヤガヤとガールズトークをしながら仕事を進めてきました。出る会議も女性のみか女性が大半を占めるというものが多かったです。
しかし発行人になったときに、出る会議の様相が一変しました(編集長はその媒体の編集の責任者ですが、発行人とは編集のみならず、販売、事業などブランドに関するすべての責任者で、出る会議も違ってきます)。女性は自分だけか、女性が少数派という会議に出ることが多くなりました。
そのとき私はこれまで感じたことのない不安や心細さを感じました。会議で緊張することなどなかったのに、すごくドキドキしました。
「今、ここで私が変な発言をしたら、フモトができないヤツと思われるだけでなく、だから女性の発行人はダメなんだと思われる」――こんなことを思っていたのです。
後に、この葛藤は、少数派である女性が味わう「トークニズム」と呼ばれるものだと知りました。