成功したとすると、男性は実力と考え、女性は運だと考える。自己評価には確かに性差が存在していて、「実際に女性は、誤った自己認識に基づいて自発的に競争から身を引いているかもしれない。(中略)自分の能力を正しく評価していないために、女性はせっかくのチャンスから身を引いたり、尻込みをしたりする。その間に、欠陥のある楽観主義者たちに先を越されてしまうのだ」とピンカーは記します。

 どうでしょう。心にビンビン刺さりませんか。

 「欠陥のある楽観主義者」のところでは、誰かの顔が浮かんだという人もいるかもしれませんね。私はこの本の中でたくさんの箇所に赤線を引きました。「そうか、自分を居心地悪くさせていたのはこういう考え方のせいか」とふに落ちたところがいっぱいあったのです。

あなたは「学習性無力感」に陥ってないですか?

 私は「インポスター症候群」という言葉を知り、自分の気持ちが少し楽になりました。心理的なワナから解放されました。女性の葛藤に名付けられた言葉を知ることの重要性を私に教えてくれたのは、ジャーナリストの福沢恵子さんです。

 福沢さんが日本の女性たちに覚えてほしい言葉として挙げたものの一つに「学習性無力感」があります。これを最後にご紹介しましょう。

 「これは、長期にわたってストレスのある状態や不愉快な刺激にさらされていると、その状況から逃れようとしなくなるという状態です。

 そういう状況を起こしたのも自分のせいと思い込むようになることもあります。これは、例えば、ある女性が会社の中で一生懸命仕事しよう、意欲を見せようとしても、上司から、『そんなことはしなくていいよ』『あなたがそんなことをしても意味がない』と言われ続けます。すると、その女性は『何をやってもムダだ』と思うようになり、仕事に対する意欲をなくしてしまうのです」(福沢さん)

 経験から無力感を学習してしまうということ。なんともせつない言葉ではありますが、日本の企業で働く女性(特にベテランの女性たち)にはもしかすると多いパターンなのかもしれません。

 「言葉を知ると、自分のもやもやした気持ちに名前を付けてあげることができます。つまり、フレーム化するということです。自分がその渦中にいると気付かないのですが、名前を知ると、『私は今、学習性無力感にさいなまれている』『ペテン師症候群に陥っている』というように、自分の状態を客観的に見ることができます。それが次にどういう行動を取ればいいかを考える第一歩にもなりますし、人の助けを求めることもしやすくなる。自分のもやもや、葛藤に名前を付けることは重要なのです」(福沢さん)

文/麓幸子 写真/PIXTA


「仕事も私生活もなぜかうまくいく
 女性の習慣」

 著者:麓 幸子
 出版社:日経BP社

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